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虹とロン毛  作者: かいちょ
第4章 ロン毛と2人の神々、そして虹
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第73話 アシス

 森の奥。


 灯りの見えた先には、小さな家があった。


 白い花に囲まれた、静かな家。


 ロン毛「……。」


 ロン毛はゆっくり扉を叩く。


 コンコン。


 しばらくして。


 ガチャ。


 扉が開いた。


 ???「はーい。」


 黒色の髪。


 黒い服。


 優しそうな瞳。


 そして少し眠そうな顔。


 ???「あ。」


 ???「来てくれたんだ。」


 ロン毛「お前が。」


 ???「うん。」


 ???「アシス。」


 ロン毛「……。」


 アシス「いらっしゃい。」


 しかし。


 その瞬間。


 ゴホッ。


 アシス「げほっ。」


 ロン毛「大丈夫か!」


 アシス「大丈夫。」


 アシス「いつものことだから。」


 ロン毛は気づいた。


 アシスの指先が、少し透けていることに。


 ロン毛「!」


 アシス「見えちゃった?」


 アシスは困ったように笑った。


 アシス「最近。」


 アシス「調和を保つ力が弱くなってて。」


 アシス「少しずつ消えてるの。」


 ロン毛「……。」


 アシス「ごめんね。」


 ロン毛「謝るなよ。」


 アシス「ふふ。」


 家の中へ入る。


 暖かい部屋。


 机。


 本棚。


 花瓶。


 そして。


 机の上に置かれたものに、ロン毛は目を止めた。


 ロン毛「これ。」


 そこには。


 下手くそな似顔絵。


 ギターを持ったロン毛。


 押し花。


 小さな日記。


 アシス「虹の宝物。」


 ロン毛「……。」


 アシス「虹はね。」


 アシス「毎日君の話ばかりしてた。」


 ロン毛「え。」


 アシス「今日は何してるかな。」


 アシス「バイト頑張ってるかな。」


 アシス「ご飯ちゃんと食べてるかな。」


 アシス「今日は笑ってるかな。」


 アシス「そんなことばかり。」


 ゴホッ。


 アシスはまた咳をした。


 ロン毛「無理するな。」


 アシス「平気。」


 アシス「もう慣れたから。」


 ロン毛は日記を開く。


 そこには。


 『ロン毛、今日もギター上手だった!』


 『団子かわいかった!』


 『かいちょさんに会えた!』


 『今日は少し元気なかった。心配。』


 『また会いたい。』


 『またお話したい。』


 『また一緒に歩きたい。』


 『また笑ってほしい。』


 『また会いたい。』


 『また会いたい。』


 『また会いたい。』


 ロン毛「……。」


 アシス「好きだったんだよ、本当に。」


 ロン毛の目から涙がこぼれる。


 ロン毛「馬鹿だな。」


 ロン毛「言えよ。」


 アシス「言えなかった。」


 アシス「だって。」


 アシス「虹だもん。」


 アシスは優しく微笑んだ。


 アシス「でも。」


 アシス「嬉しかった。」


 アシス「君に会えて。」


 ゴホッ。


 アシスの身体がまた少し透ける。


 アシス「大丈夫。」


 アシス「まだ大丈夫。」


 そして。


 アシスは窓の外を見つめながら、小さく呟いた。


 アシス「虹。」


 アシス「きっと喜ぶよ。」


 アシス「ロン毛が。」


 アシス「ここまで来てくれたこと。」


 夜風が吹く。


 白い花が揺れる。


 そしてロン毛はまだ知らない。


 虹が元の世界へ帰った、本当の理由を。


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