第72話 老人の正体
老人「……やっぱり、来たか。」
ロン毛「じいさん!」
冬のライブハウスで「春になればいいことあるよ」と笑っていた老人。
まさかこんな場所で再会するとは思わなかった
老人はロン毛の顔を見ると、懐かしそうに微笑んだ。
老人「昔のわしによく似てる。」
ロン毛「え。」
老人「大切なものを失って。」
老人「それでも会いたくて旅をする、百年以上前のわしと同じじゃ。」
風「じいさんも旅人?」
老人「そうじゃ。」
老人「昔、アシス様に助けられた。」
老人「そして、ナムネ様に記憶を消され、人間界へ帰った。」
ロン毛「!」
老人「だが中途半端に記憶が残ってしまっての、人間界とイデア界を行き来できる、変な存在になってしまった。」
老人は少し笑った。
老人「アシスは優しい、優しすぎるくらいだ。」
老人「だから、自分を犠牲にしてしまう。」
老人「助けてやってくれ。」
ロン毛「……ああ。」
老人「それが。」
老人「昔、助けられたわしの願いじゃ。」
風「じいさん!消えそうになってる!」
次の瞬間。
春の風が吹き抜ける。
気づけば。
老人の姿は消えていた。
風「消えた!」
ロン毛「……。」
そして。
森の奥。
木々の間に、小さな灯りが見えた。
白い壁。
花の咲く庭。
ぽつんと建つ一軒の家。
風「家。」
ロン毛「アシスの家かな。」
風「たぶん。」
ロン毛「行こう。」
ロン毛は、灯りの見える家へ向かって歩き始めた。




