表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹とロン毛  作者: かいちょ
第4章 ロン毛と2人の神々、そして虹
PR
74/107

第68話 七色の花

 春の風が吹く。


 ナムネの庭は静かに揺れていた。


 ロン毛は、七色の花の前にしゃがみ込んだ。


 風「泣いてる?」


 ロン毛「泣いてねぇ。」


 風「嘘。」


 ロン毛「……。」


 七色の花は。


 まるで誰かが大事に育てていたように。


 優しく咲いていた。


 そして。


 花の奥。


 他の花々とは違う。


 白く大きな花が一輪。


 静かに咲いていることに気づく。


 七色の花よりも。


 さらに不思議な輝き。


 まるで。


 誰かが見守るように。


 優しく。


 穏やかに。


 そこにあった。


 ロン毛「なんだ。」


 風「……。」


 風「知らない。」


 ロン毛「またか。」


 風「風だから。」


 ロン毛「便利だな。」


 しかし。


 白い花は。


 まるでロン毛を待っていたかのように。


 ゆっくりと花びらを揺らした。


 そして。


 誰かの優しい声が。


 風に混じって聞こえた。


 ???「やっと。」


 ???「ここまで来たんだね。」


 ロン毛「!」


 振り向く。


 誰もいない。


 ただ。


 白い花の向こう側で。


 ロン毛「……誰だ。」


 風は静かに囁いた。


 風「まだ。」


 風「会っちゃだめ。」


 風「もう少し。」


 風「もう少しだけ。」


 ロン毛は再び七色の花を見つめた。


 すると。


 花びらが一枚。


 ふわりと舞い上がる。


 その瞬間。


 景色が変わった。


 夕暮れ。


 まだ自然と話せるようになる前。


 高校生くらいのロン毛が、自転車で坂道を下っている。


 その上空。


 雨上がりの空。


 一筋の虹。


 そして。


 少女の声。


 虹「今日も元気!」


 虹「よかった!」


 ロン毛「?」


 ロン毛には聞こえていない。


 しかし。


 虹は嬉しそうに笑っていた。


 景色が変わる。


 大学生になったロン毛。


 一人でギターを弾いている。


 落ち込んだ顔。


 雨の夜。


 空には小さな虹。


 虹「元気出して。」


 虹「その曲好きだよ。」


 虹「頑張れ!」


 景色がまた変わる。


 失業したばかりのロン毛。


 ぼんやりと歩く帰り道。


 虹「大丈夫かな。」


 虹「最近笑わないな。」


 虹「頑張りすぎだよ。」


 虹「笑ってよ。」


 ロン毛「……。」


 景色はまだ続く。


 電柱に頭をぶつけた日


 虹「わ!」


 虹「ぶつかった!」


 虹「大丈夫かな!?」


 虹「え。」


 虹「もしかして。」


 虹「自然と話せるようになった?」


 虹「ほんとに?」


 虹「やっと!」


 虹「やっと会える!」


 ロン毛「……。」


 次々と流れる。


 団子を食べるロン毛。


 ライブで「曇」を歌うロン毛。


 水族館でくるまえびと話すロン毛。


 かいちょと笑うロン毛。


 バイト帰りに空を見上げるロン毛。


 いつも。


 いつも。


 空のどこかで。


 虹が見ていた。


 虹「今日もお疲れ様!」


 虹「また会えた!」


 虹「ギター上手!」


 虹「その服かわいい!」


 虹「眠そう!」


 虹「楽しそう!」


 虹「えへへ!」


 虹「ロン毛!」


 虹「好き!」


 ロン毛「……。」


 景色が消える。


 ナムネの庭。


 七色の花の前。


 ロン毛は動かなかった。


 風「虹ちゃん。」


 風「ずっと幸せそうだった。」


 ロン毛「……。」


 風「ロン毛を見てる時。」


 風「いつも笑ってた。」


 その時。


 白い花が優しく揺れる。


 そして。


 また。


 あの声が聞こえた。


 ???「そうだよ。」


 ???「あの子。」


 ???「本当に幸せそうだった。」


 ロン毛「!」


 白い花の向こう。


 姿はぼやけて見えない。


 ???「もう少し。」


 ???「もう少しだけ。」


 ???「頑張って。」


 ロン毛「お前。」


 ???「ふふ。」


 ???「きっと。」


 ???「会えるから。」


 春の風が吹く。


 そして。


 白い花びらが空へ舞った。


 その先に。


 誰かの家のようなものが。


 遠く。


 森の向こうに見えていた。


 風「……。」


 風「アシス様。」


 ロン毛「!」


 風「きっと。」


 風「待ってる。」


 ロン毛は立ち上がった。


 ロン毛「行こう。」


 ロン毛「会いに。」


 春の空の下。


 七色の花は。


 静かに揺れていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ