第67話 ナムネの庭
風に導かれ、ロン毛は丘を越えた。
その先に広がっていたのは、どこまでも続く花畑だった。
赤、青、黄色、白。
季節も種類もバラバラの花々が、まるで空の星のように一面に咲いている。
ロン毛「すげぇ……。」
風「ここが。」
風「ナムネの庭。」
ロン毛「綺麗だな。」
風「記憶の花。」
ロン毛「記憶?」
風「うん。」
風「誰かの大切な思い出。」
風「忘れたくない気持ち。」
風「全部花になる。」
ロン毛「不思議な場所だな。」
ロン毛が一輪の花に触れる。
すると。
目の前に景色が浮かび上がった。
こたつ。
鍋。
笑い声。
かいちょ「ロン毛、白菜取ってくれ!」
釜内「肉なくなるぞ!」
ロン毛「お前ら食うの早いんだよ!」
電柱「最近、空が騒がしい。」
かいちょ「何独り言言ってんだ?」
ロン毛「なんでもない。」
景色は消える。
ロン毛「かいちょだ鍋した時。」
風「楽しそう。」
ロン毛「ああ。」
次の花。
触れる。
居酒屋。
久しぶりに集まった同級生たち。
笑い声。
景色はまた消える。
ロン毛「懐かしいな。」
風「良い記憶。」
ロン毛「そうだな。」
さらに歩く。
小さな青い花。
触れてみる。
水族館。
水槽。
くるまえび 「派手じゃなくてもいい。」
くるまえび 「誰かと比べなくてもいい。」
くるまえび 「自分の色を大事にすればいい。」
その景色はまた消える
すると。
少し先。
広い花畑の中で。
一輪だけ。
明らかに違う花が咲いていた。
風「……。」
ロン毛「なんだ。」
周囲の花とは違う。
七色。
近づくだけで胸が温かくなる。
ロン毛「綺麗だ。」
風「この花知らない。」
ロン毛「え?」
風「初めて見る。」
ロン毛「……。」
花は静かに揺れる。
小さな声が聞こえた気がした。
「えへへ。」
ロン毛「!」
「ロン毛!」
「見て!」
「夕焼け綺麗!」
「団子かわいい!」
「ロン毛の歌好き!」
七色の花から。
優しい光が溢れる。
その周りだけ。
春の風が吹いていた。




