第66話 アシスを探す旅
ナムネと虹が消えた神殿。
静まり返った白い空間に、一人残されたロン毛はしばらく動けなかった。
さっきまで確かにいた。
会いたかった人。
ずっと探していた虹。
触れることはできなかった。
それでも。
あの笑顔は本物だった。
虹「またね!」
その声が頭の中で何度も響く。
ロン毛「またね、か。」
ロン毛「待ってろよ。」
ロン毛は残された本を胸に抱え、神殿の外へ出た。
すると、優しい風が吹いた。
風「元気ない。」
ロン毛「そりゃな。」
風「会えたのに。」
ロン毛「ああ。」
風「嬉しかった?」
ロン毛「嬉しかった。」
風「泣きそう?」
ロン毛「少しな。」
風「人間は大変。」
ロン毛「お前らは気楽そうでいいな。」
風「そんなことない。」
ロン毛「そうか。」
風はくるくるとロン毛の周りを回る。
風「アシス様。」
ロン毛「!」
風「助けるんでしょ。」
ロン毛「ああ。」
風「じゃあ。」
風「伝承を教える。」
風「泣き虫で。笑顔が素敵だった。アシス様」
ロン毛「お前、会ったことあるのか。」
風「昔。」
ロン毛「そうか。」
風「アシス様は寂しがり屋だった。」
ロン毛「寂しがり屋。」
風「だから。いつもナムネ様と一緒だった。」
風「二人で笑って、二人で世界を守ってた。」
ロン毛「ナムネ。」
風「うん。でも今。」
風「アシス様は眠ってる。」
ロン毛「虹も。」
風「うん。」
風「虹もきっと。」
ロン毛「……。」
風「会いたい?」
ロン毛「当たり前だ。」
風「じゃあ。」
風「歩こう。」
ロン毛「どこへ。」
風「ナムネの庭。」
ロン毛「!」
風「記憶が花になる場所。」
風「ナムネ様が大切なものを咲かせる場所。」
ロン毛「そこに。」
風「アシス様への道があるかも。」
ロン毛「かもか。」
風が前へ吹く。
まるで案内するように。
遠くには大きな丘。
その向こうには、どこまでも続く色とりどりの花畑が見えていた。
風「見える?」
ロン毛「ああ。」
風「ナムネの庭。」
ロン毛「綺麗だな。」
風「まだ入口。」
ロン毛「広いのか。」
風「とっても。」
風「記憶の数だけ花が咲いてる。」
ロン毛「そんなに。」
風「ロン毛の記憶も。」
風「虹ちゃんの記憶も。」
風「みんなの記憶も。」
ロン毛「……。」
風「だから。」
風「大切に歩いて。」
ロン毛「わかった、行こう。」
風「うん!」
ロン毛「待ってろ、アシス。虹。」
ロン毛「今度こそ。」
ロン毛「ちゃんと迎えに行くから。」
春の風が吹く。
そして。
花の香りとともに。
ロン毛は「ナムネの庭」と呼ばれる、不思議な花畑へ向かって歩き始めた。
その花畑に。
自分も知らない、大切な記憶が眠っているとも知らずに。




