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虹とロン毛  作者: かいちょ
第3章 虹を探す旅
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第64話 記憶の湖

 メロディと別れてから二日。


 ロン毛は地図に記された「記憶の湖」へとたどり着いていた。


 目の前に広がるのは、どこまでも静かな湖。


 水面には雲が映り。


 風が吹くたび、小さな波紋が広がる。


 そして湖の遥か先。


 白い霧の向こうに、ぼんやりと巨大な神殿が見えていた。


 ロン毛「……あれか。」


 湖「ようこそ。」


 岸辺には、一艘の小さなボートが繋がれていた。


 誰もいない。


 しかし。


 船のオールが勝手に動き始める。


 ボート「乗るかい。」


 ロン毛「勝手に動くのか。」


 ボート「昔から。」


 ロン毛「そうか。」


 ロン毛は静かに乗り込んだ。


 ボート「神殿まで行こう。」


 ロン毛「頼む。」


 ゆっくりと。


 ボートは湖の上を進み始めた。


 静かな風。


 優しい波の音。


 そして。


 水面に映る景色が少しずつ変わっていく。


 ロン毛「?」


 そこに映ったのは。


 春の日。


 雨上がりの帰り道。


 虹「やっと会えた!」


 ロン毛「初対面だろ。」


 虹「私はずっと見てたから!」


 ロン毛「変な奴。」


 虹「えへへ!」


 ロン毛は思わず笑った。


 ロン毛「最初から騒がしかったな。」


 ボート「楽しそう。」


 ロン毛「楽しかった。」


 次の波紋。


 桜並木。


 団子を見つめる虹。


 虹「かわいい!」


 ロン毛「食べ物だぞ。」


 虹「かわいい!」


 ロン毛「結局食うんだろ。」


 虹「うん!」


 ロン毛「はは。」


 次の波紋。


 夕焼けの土手。


 並んで歩く二人。


 虹「ロン毛といると楽しいなぁ。」


 ロン毛「俺も。」


 虹「えへへ!」


 ロン毛「……。」


 ロン毛「好きだったんだよな。」


 ボート「うん。」


 ロン毛「言えなかったけど。」


 ボート「うん。」


 次の波紋。


 夜の公園。


 虹「もし私がいなくなったら、どうする?」


 ロン毛「また会えるだろ。」


 虹「……そっか。」


 ロン毛「馬鹿だったな。」


 ボート「後悔してる?」


 ロン毛「してる。」


 ボート「たくさん?」


 ロン毛「たくさん。」


 そして。


 雨の日。


 激しい雨。


 虹「どうせ消える私なんてどうでもいいんでしょ!」


 ロン毛「そんなわけ!」


 虹「もう知らない!」


 七色の涙。


 走り去る背中。


 ロン毛「……。」


 ロン毛は俯いた。


 ロン毛「ごめんな。」


 湖「まだ言えてない。」


 ロン毛「ああ。」


 湖「だから来た。」


 ロン毛「そうだ。」


 湖「謝りたい?」


 ロン毛「うん。」


 湖「好きって言いたい?」


 ロン毛「うん。」


 湖「なら。」


 湖「会わなきゃ。」


 ロン毛「……。」


 やがて。


 霧の向こうから。


 巨大な白い神殿が姿を現す。


 空まで届くような塔。


 無数の本棚。


 白い階段。


 静寂。


 そして。


 鐘の音。


 ロン毛「ここが。」


 ボート「ナムネ様の神殿。」


 ロン毛「やっとか。」


 ボート「長かったね。」


 ロン毛「長かった。」


 ボート「怖い?」


 ロン毛「少し。」


 ボート「大丈夫。」


 ロン毛「なんで。」


 ボート「記憶は優しいから。」


 ロン毛「そうか。」


 ボートは静かに岸へ着いた。


 ロン毛が降りる。


 そして。


 白い階段の上。


 一人の少女が立っていた。


 白髪。


 天使のように可愛くて。


 白いワンピース。


 穏やかな笑顔。


 少女「いらっしゃい。」


 ロン毛「……。」


 少女「待ってたよ。」


 ロン毛「おまえは?」


 少女「久しぶり。」


 ロン毛「初対面だ。」


 少女「ふふ。」


 少女「私は、記憶を司る者。」


 少女「ナムネ。」


 そして。


 少女は優しく微笑んだ。


 ナムネ「ロン毛。」


 ナムネ「虹ちゃんを迎えに来たんだよね。」

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