表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹とロン毛  作者: かいちょ
第3章 虹を探す旅
68/90

第62話 アシスの欠片

 ナムネの神殿を目指して歩き始めてから、数日。


 イデア界の景色に、少しずつ異変が現れ始めていた。


 春の花畑に雪が降る。


 夏の空に紅葉が舞う。


 夕焼けの中に朝日が昇る。


 そして。


 風が吹いたかと思えば、突然止まる。


 ロン毛「変だな。」


 木「変だ。」


 花「変だね。」


 川「変だ。」


 ロン毛「みんな変しか言わねぇな。」


 花「変なんだもん。」


 ロン毛「それもそうか。」


 歩き続ける。


 すると。


 空の端に、小さな虹が現れた。


 しかし。


 次の瞬間には、形が崩れて消えてしまう。


 ロン毛「!」


 ロン毛「今の。」


 風「見た?」


 ロン毛「お前も見えたのか。」


 風「うん。」


 ロン毛「何なんだ。」


 風「最近多い。」


 ロン毛「最近?」


 風「季節が混ざってる。」


 風「空も変。」


 風「雲も変。」


 風「海も変。」


 ロン毛「……。」


 風「みんな噂してる。」


 ロン毛「噂。」


 風「アシス様。」


 ロン毛「!」


 ロン毛「アシス。」


 風「力を失いかけてる。」


 ロン毛「なんだって。」


 風「知らない。」


 ロン毛「またか。」


 風「風だから。」


 ロン毛「便利な言葉だな。」


 風「ふふ。」


 すると。


 遠くから別の風が吹いてきた。


 西からの風。


 東からの風。


 そして。


 二つの風が話し始める。


 西風「聞いた?」


 東風「聞いた。」


 西風「調和が崩れてる。」


 東風「アシス様の光が弱い。」


 西風「最近会ってない。」


 東風「何百年も。」


 ロン毛「お前ら。」


 西風「人間!」


 東風「珍しい!」


 ロン毛「アシスって何者なんだ。」


 西風「春を春に。」


 東風「夏を夏に。」


 西風「雨を雨に。」


 東風「虹を虹に。」


 西風「全部を繋ぐ人。」


 ロン毛「……。」


 東風「昔は笑ってた。」


 西風「優しかった。」


 東風「でも最近。」


 西風「光が弱い。」


 ロン毛「どうなるんだ。」


 二つの風は静かになった。


 そして。


 小さく答えた。


 西風「世界が壊れる。」


 東風「少しずつ。」


 ロン毛「……。」


 西風「春と冬。」


 東風「朝と夜。」


 西風「記憶と夢。」


 東風「全部混ざる。」


 ロン毛「そんな。」


 西風「だから。」


 東風「みんな心配してる。」


 ロン毛は空を見上げた。


 さっきまで夕焼けだった空に。


 雪が降っている。


 その向こうには。


 夏の入道雲。


 そして。


 一瞬だけ。


 七色の光。


 ロン毛「虹……。」


 風「会いたい?」


 ロン毛「当たり前だ。」


 風「じゃあ急がなきゃ。」


 ロン毛「?」


 風「アシス様が倒れたら。」


 風「虹も。」


 ロン毛「……!」


 風「全部変わっちゃうかもしれない。」


 ロン毛「おい。」


 風「噂だけど。」


 ロン毛「そういう大事なこと先に言え!」


 風「ごめん。」


 ロン毛「……。」


 風「でも。」


 風「まだ間に合うかもしれない。」


 ロン毛「間に合う。」


 風「うん。」


 風「ナムネ様なら。」


 風「何か知ってる。」


 ロン毛「ナムネ。」


 風「記憶を司る者。」


 風「アシス様の親友。」


 ロン毛「親友。」


 風「ずっと一緒だった。」


 ロン毛「……。」


 ロン毛は拳を握る。


 ロン毛「待ってろ。」


 ロン毛「虹。」


 ロン毛「アシス。」


 ロン毛「ナムネ。」


 ロン毛「全部。」


 ロン毛「終わらせない。」


 その時。


 遠く。


 空の果て。


 誰もいないはずの雲の上。


 ひび割れた白い神殿。


 その奥。


 一人の女性が眠っていた。


 長い銀髪。


 穏やかな寝顔。


 しかし。


 その身体は少しずつ光となって消え始めている。


 そして。


 足元には。


 砕けた小さな結晶。


 七色に輝く欠片。


 誰かが小さく呟いた。


 ???「アシス。」


 ???「もう限界なの。」


 そして。


 どこからか。


 悲しそうな風が吹いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ