表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹とロン毛  作者: かいちょ
第3章 虹を探す旅
64/88

第58話 古い地図

森の奥の小さな家。


 昼下がりのやわらかな光が窓から差し込んでいた。


 ロン毛は湯呑みを置き、立ち上がった。


 ロン毛「世話になった。」


 老人「もう行くのか。」


 ロン毛「虹が待ってるかもしれないからな。」


 老人「待っておるかは知らん。」


 ロン毛「そこは知らんのか。」


 老人「じじいじゃからな。」


 ロン毛「便利な言葉だ。」


 老人「便利じゃ。」


 老人は笑いながら、本棚の奥へ消えていった。



 しばらくして、一枚の古びた紙を持って戻ってくる。


 老人「ほれ。」


 ロン毛「なんだこれ。」


 老人「地図じゃ。」


 ロン毛「地図?」


 紙は黄ばんでおり、端が少し破れている。


 しかし。


 そこに描かれている景色は不思議だった。


 山も川も、現実のものとは違う。


 地図の中央には、大きくこう書かれていた。


 『追憶の遊園地』


 そして。


 北の方角に。


 『星降る丘』


 という文字。


 ロン毛「追憶の遊園地。」


 老人「昔の記憶が集まる場所じゃ。」


 ロン毛「星降る丘。」


 老人「願いが落ちる場所。」


 ロン毛「変な場所ばっかだな。」


 老人「イデア界じゃからな。」


 ロン毛「それもそうか。」


 老人「わしも若い頃、一度だけ行った。」


 ロン毛「本当か。」


 老人「迷った。」


 ロン毛「おい。」


 老人「三日くらい。」


 ロン毛「駄目じゃねぇか。」


 老人「楽しかった。」


 ロン毛「そうか。」


 老人は窓の外を眺めた。


 風が花を揺らしている。


 老人「旅というのは不思議なものでな。」


 ロン毛「うん。」


 老人「歩いておる時は分からん。」


 老人「何をしているのか。」


 老人「どこへ向かっているのか。」


 老人「正しいのか。」


 老人「間違っているのか。」


 ロン毛「……。」


 老人「だが。」


 老人「振り返ると。」


 老人「全部意味があったと思える。」


 ロン毛「……。」


 老人「答えを急ぐな。」


 ロン毛「うん。」


 老人「旅そのものが答えになる。」


 ロン毛「旅そのもの。」


 老人「そうじゃ。」


 ロン毛「難しいな。」


 老人「歳を取るとそうなる。」


 ロン毛「またか。」


 老人「はっはっは。」


 老人は玄関まで見送りに出てきた。


 老人「北へ向かえ。」


 老人「追憶の遊園地を抜け。」


 老人「星降る丘へ。」


 ロン毛「そこに虹がいるのか。」


 老人「知らん。」


 ロン毛「じじい。」


 老人「だが。」


 老人「お前さんが会うべき者には会える。」


 ロン毛「会うべき者。」


 老人「うむ。」


 ロン毛「ありがとう。」


 老人「うむ。」


 ロン毛「また来る。」


 老人「迷ったら来い。」


 ロン毛「迷わなくても来るかも。」


 老人「お茶くらい出す。」


 ロン毛「安いな。」


 老人「じじいじゃからな。」


 二人は笑った。


 そして。


 ロン毛は森の道へ歩き出した。


 夕暮れの光。


 鳥の声。


 風の匂い。


 ポケットの中には古い地図。


 その時。


 ふわり。


 七色の花びらが目の前を横切った。


 ロン毛「!」


 振り返る。


 誰もいない。


 しかし。


 どこからか。


 懐かしい声が聞こえた気がした。


 虹「ロン毛!」


 ロン毛「……。」


 ロン毛「待ってろ。」


 ロン毛「今行くから。」


 そう呟き。


 ロン毛は地図を開いた。


 その先。


 『追憶の森』の文字が。


 夕日に照らされて静かに輝いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ