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虹とロン毛  作者: かいちょ
第3章 虹を探す旅
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第54話 森にある空白の町

 ガタン。


 ゴトン。


 春風列車がゆっくりと止まる。1時間くらい電車にゆられていた。


 車掌「思い出の森。」


 車掌「思い出の森です。」


 ロン毛「ここか。」


 タンポポ「降りるのか。」


 ロン毛「ああ。」


 忘れられた歌「また会いましょう。」


 野うさぎ「虹が見つかるといいな。」


 ロン毛「ありがとな。」


 扉が開く。


 ロン毛が降り立つと、列車は春風に溶けるように消えていった。


 目の前には、大きな森。


 静かな木々。


 鳥の声。


 そして森の向こうに、小さな町が見えた。


 ロン毛「町?」


 森を抜ける。


 するとそこには、どこか見覚えのある風景が広がっていた。


 海へ続く広い道。


 ゆるやかに流れる川。


 低い山並み。


 港町のような空気。


 古い商店街。


 橋。


 そして遠くに見える穏やかな海。


 しかし。


 誰もいない。


 風もない。


 犬も猫も。


 人影すらなかった。


 ロン毛「……。」


 ロン毛「なんだここ。」


 錆びた信号機。


 止まったままの時計。


 古い喫茶店。


 誰もいないバス停。


 住宅街。


 そして、海沿いの防潮堤。


 まるで。


 誰かが住んでいた町から、人だけがいなくなってしまったようだった。


 ロン毛「空っぽだな。」


 すると。


 かすかに声が聞こえた。


 「また今度な。」


 「約束だぞ。」


 「元気でね。」


 「忘れないから。」


 ロン毛「!」


 振り返る。


 しかし誰もいない。


 ただ。


 淡い光が空気の中を漂っていた。


 ロン毛「なんだ?」


 「ごめんね。」


 「ありがとう。」


 「また会おう。」


 「大好き。」


 消えていく声。


 ロン毛「……。」


 ロン毛「思い出か。」


 古い商店街を歩く。


 誰もいない魚屋。


 誰もいない本屋。


 誰もいない喫茶店。


 その空気はどこか懐かしかった。


 ロン毛「変な町だ。」


 すると。


 風鈴の音が鳴った。


 チリン。


 ロン毛「ん?」


 誰もいないはずの空き地。


 そこに一本のベンチがあった。


 そして。


 その上には。


 一本だけ。


 見覚えのある髪飾り。


 虹がいつも付けていた、小さな七色の花の飾りだった。


 ロン毛「虹!」


 慌てて駆け寄る。


 しかし。


 誰もいない。


 髪飾りも、触れた瞬間に光となって消えてしまった。


 ロン毛「……。」


 ロン毛「いたのか。近くに。」


 その時。


 遠くから。


 かすかな笑い声が聞こえた。


 虹「えへへ!」


 ロン毛「!」


 虹「ロン毛!」


 ロン毛「虹!」


 振り返る。


 しかし。


 そこにいたのは夕日に照らされた空だけだった。


 ロン毛「……。」


 ロン毛「幻か。」


 静かな町。


 誰も住んでいない町。


 忘れられた思い出。


 果たされなかった約束。


 言えなかった言葉。


 失われた時間。


 そんなものたちが漂う町。


 空白の町。


 そして。


 町の奥。


 建物に隠れ一軒の古い駄菓子屋が見えた。


 明かりだけがついている。


 まるで。


 誰かがロン毛を待っているかのように。



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