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虹とロン毛  作者: かいちょ
第3章 虹を探す旅
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第53話 春風列車

 ガタン。


 ゴトン。


 ガタン。


 ゴトン。


 霧の向こうから現れた列車は、どこか古びていた。

 車体には、柔らかな緑色の模様。

 窓の外では、春の風がふわりと舞っている。


 行き先。

 『思い出線』


 ロン毛「思い出線……。」


 フクロウ「乗らないと、先へは進めん。」


 ロン毛「そうか。」


 フクロウ「切符はいらない。」


 ロン毛「助かる。」


 フクロウ「代わりに思い出をなくすんじゃないよ。」


 ロン毛「?」


 フクロウ「忘れるなということだ。」


 ロン毛「そうか。」


 汽笛が鳴る。


 ポォー。


 ロン毛は深呼吸して列車へ乗り込んだ。


 中は不思議な空間だった。


 木でできた座席。


 柔らかな光。


 窓の外には春風が流れている。


 しかし。


 人間は誰もいない。


 座席の上には、白い野うさぎ。


 向かいには、目の見えないモグラ。


 天井近くには、ツバメたち。


 植木鉢に咲いたタンポポ。


 そして。


 誰もいない席から、かすかに歌声が聞こえる。


 ロン毛「……。」


 ロン毛「なんだここ。」


 タンポポ「新入りだ。」


 ロン毛「うわ。」


 タンポポ「人間?」


 野うさぎ「人間だ。」


 ツバメ「珍しい。」


 モグラ「本当か。」


 ロン毛「お前らも喋るのか。」


 タンポポ「ここでは普通。」


 野うさぎ「人間は珍しい。」


 ロン毛「そうなのか。」


 すると。


 隣の席から小さな声がした。


 ???「失礼。」


 ロン毛「ん?」


 そこには。


 ぼんやりと光る、古いメロディが座っていた。


 ロン毛「……。」


 ロン毛「何?」


 メロディ「歌です。」


 ロン毛「歌?」


 メロディ「忘れられた歌。」


 ロン毛「歌が乗るのか。」


 メロディ「乗ります。」


 ロン毛「大変だな。」


 メロディ「慣れました。」


 ロン毛「そうか。」


 タンポポ「お前。」


 ロン毛「ん?」


 タンポポ「なんで来た。」


 ロン毛「探し人。」


 ツバメ「恋人?」


 ロン毛「……。」


 野うさぎ「図星だ。」


 ロン毛「恋人じゃない。」


 タンポポ「違うのか。」


 ロン毛「好きだった。」


 モグラ「だった?」


 ロン毛「いなくなった。」


 メロディ「会いたい?」


 ロン毛「会いたい。」


 野うさぎ「名前は。」


 ロン毛「虹。」


 その瞬間。

 車内が静かになった。


 タンポポ「虹?」


 ツバメ「虹?」


 モグラ「七色の?」


 メロディ「……。」


 ロン毛「知ってるのか?」


 タンポポ「知らない。」


 ロン毛「おい。」


 野うさぎ「でも。」


 ツバメ「珍しい。」


 モグラ「本当に珍しい。」


 メロディ「虹を探す人間なんて。」


 タンポポ「初めて見た。」


 ロン毛「そうなのか。」


 野うさぎ「普通は忘れる。」


 モグラ「諦める。」


 ツバメ「季節が変われば。」


 メロディ「歌も。」


 タンポポ「花も。」


 野うさぎ「思い出も。」


 モグラ「いつか消える。」


 ロン毛「……。」


 ロン毛「でも。忘れたくない。」


 ロン毛「まだ好きだって言ってない、ありがとうも。」


 ロン毛「ごめんも。何も伝えてない。」


 ロン毛「だから。会わなきゃ終われない。」


 静かになった車内。


 すると。


 忘れられた歌が小さく笑った。


 メロディ「優しい人。」


 タンポポ「馬鹿かもしれない。」


 野うさぎ「不器用。」


 ツバメ「でも嫌いじゃない。」


 モグラ「そうだな。」


 列車は春風に揺られながら走る。


 窓の外には。


 春の花畑。


 夕焼け。


 夏の海。


 秋の山。


 冬の雪。


 いろいろな季節が混ざり合って流れていく。


 ロン毛「不思議だな。」


 メロディ「思い出だから。」


 ロン毛「……。」


 メロディ「次の駅です。」


 ロン毛「次?」


 タンポポ「降りる準備。」


 ツバメ「乗り過ごすな。」


 ロン毛「どこなんだ。」


 野うさぎ「思い出の森。」


 モグラ「迷子になる場所。」


 そして。


 車掌の声が車内に響く。


 車掌「まもなく。」


 車掌「思い出の森。」


 車掌「思い出の森。」


 窓の外には。


 どこまでも続く、優しい光の森が広がっていた。

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