第6話 かむのかまないよかむよ(?)
前の席で、見覚えのある顔が真っ黒な服で寝ていた。
友達と繋がってるGPSアプリを確認する。
かいちょは図書館……自分のアイコンに2と表示された。
ロン毛 「……。」
ロン毛 「釜内?」
反応はない。
ロン毛 「おい。」
釜内 「んぁ……。」
ロン毛 「生きてるか。」
釜内 「……蛇内線……。」
ロン毛 「寝言かよ。夢の中でも電車か。」
釜内 「あと一駅……。」
ロン毛 「お前の最寄りすぎてんぞ。」
釜内 「えええええ」
釜内は飛び起きた。
周りの乗客が少し驚く。
ロン毛は隣に座った。
電車はゆっくり動き出す。
特に話すこともない。
でも沈黙は気まずくない。
小学生の頃からそうだった。
児童館でも。
中学校でも。
高校でも。
こうして隣にいるのが当たり前だった。
しばらくして。
釜内 「最近どう。」
ロン毛 「ギター。」
釜内 「いいな。」
ロン毛 「そっちは。」
釜内 「電車。」
ロン毛 「知ってる。」
釜内 「最近、新しいレンズ買った。」
ロン毛 「またか。」
釜内 「金ない、アイドルに貢ぎすぎた。」
ロン毛 「自業自得。」
釜内 「でも楽しい。」
ロン毛 「ならいい。」
二人は笑った。
電車が駅に止まる。
夕日が車内に差し込む。
釜内 「そういえば。」
ロン毛 「なんだ。」
釜内 「小学生の頃、児童館でお前と初めて話した日覚えてる?」
ロン毛 「覚えてない。」
釜内 「ひど。」
ロン毛 「お前は?」
釜内 「覚えてる。」
ロン毛 「まじか。」
釜内 「一人で本読んでた。」
ロン毛 「そうだっけ。」
釜内 「俺、隣で電車の本読んでた。」
ロン毛 「変なガキだな。」
釜内 「お互い様。」
ロン毛 「まあな。」
また電車が走り出す。
釜内 「気づいたら十年以上だな。」
ロン毛 「長いな。」
釜内 「でも全然変わってない。」
ロン毛 「お前は相変わらず電車。」
釜内 「お前は相変わらず音楽。」
ロン毛 「そうだな。」
釜内 「なんか安心する。」
ロン毛 「何が。」
釜内 「変わってなくて。」
ロン毛 「変わらないのも悪くない。」
釜内 「うん。」
少し沈黙。
ガタンゴトン。
電車の音だけが響く。
釜内 「なあ。」
ロン毛 「なんだ。」
釜内 「俺たち、おじいちゃんになってもこんな感じかな。」
ロン毛 「どうだろ。」
釜内 「電車乗って。」
ロン毛 「うん。」
釜内 「くだらない話して。」
ロン毛 「うん。」
釜内 「笑って。」
ロン毛 「うん。」
釜内 「いいな。」
ロン毛 「悪くない。」
窓の外。
夕焼けが流れていく。
終点まであと少し。
ロン毛は思う。
親友って。
特別なことをする相手じゃない。
ただ隣に座って。
他愛もない話をして。
笑っていられる。
そんな各駅停車みたいな時間を、一緒に過ごせる人なんだと。
俺の周りには自然以外にも話してくれる友人がいる。
釜内はあたりめを取り出して食べ始めた。
釜内曰く噛む力はおじいちゃんになっても大事らしい
電柱「最近俺の出番なくね……」




