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虹とロン毛  作者: かいちょ
第2章 虹との出会い
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第49話 雨雲と七色の涙

 五月。


 少し蒸し暑さを感じる夕方。


 ロン毛と虹は、いつもの土手で待ち合わせをしていた。


 しかし、その日の虹はどこか元気がなかった。


 ロン毛「どうした?」


 虹「ううん。」


 ロン毛「また元気ないな。」


 虹「大丈夫。」


 ロン毛「そうか。」


 風も静かだった。


 空も、どこか重たい。


 すると。


 空の向こうから、黒い雲がゆっくりと近づいてきた。


 雨雲「……。」


 虹「!」


 ロン毛「雨か。」


 雨雲「虹。」


 虹「……。」


 雨雲「帰る時が近い。」


 ロン毛「ん?」


 虹「……。」


 雨雲「覚悟はできているか。」


 虹「……うん。」


 ロン毛「おい。」


 ロン毛「何の話だ?」


 虹「……。」


 雨雲「伝えていないのか。」


 ロン毛「伝える?」


 虹「……。」


 ロン毛「おい、虹。」


 雨雲「帰る時は変わらない。」


 雨雲「もう長くはない。」


 ロン毛「待て。」


 ロン毛「なんだよそれ。」


 虹「……。」


 ロン毛「帰るって何だよ。」


 虹「……。」


 ロン毛「おい!」


 虹「ごめん。」


 ロン毛「ごめんじゃ分かんねぇよ!」


 虹「……。」


 ロン毛「知ってたのか?」


 虹「うん。」


 ロン毛「いつから。」


 虹「最初から。」


 ロン毛「は?」


 虹「ずっと。」


 ロン毛「……。」


 ロン毛「なんで話してくれなかったんだ!」


 虹「……!」


 ロン毛「そんな大事なこと!」


 ロン毛「なんで俺だけ知らないんだよ!」


 虹「言えるわけないでしょ!」


 ロン毛「なんで!」


 虹「怖かったから!」


 ロン毛「俺は!」


 ロン毛「俺だけ知らないなんて嫌だ!」


 虹「じゃあどうすればよかったの!」


 虹「会った時に言えばよかった!?」


 虹「『私、いつか消えるんだ』って笑って言えばよかった!?」


 ロン毛「……!」


 虹「そんなの無理だよ!」


 虹「せっかく会えたのに!」


 虹「やっと会えたのに!」


 虹「もっと一緒にいたかったのに!」


 ロン毛「だったら!」


 ロン毛「なんで隠すんだよ!」


 虹「嫌われるのが怖かった!」


 ロン毛「そんなことで!」


 虹「そんなこと!?」


 虹「ロン毛にはそんなことなの!?」


 ぽつり。


 雨が降り始めた。


 そして。


 次第に激しい雨へと変わる。


 虹の目からも、七色の涙がこぼれていた。


 虹「どうせ!」


 虹「どうせ消える私なんて!」


 虹「どうでもいいんでしょ!」


 ロン毛「そんなわけ!」


 虹「知らない!」


 虹「知らないよ!」


 虹「ロン毛なんか知らない!」


 ロン毛「虹!」


 虹「もう知らない!」


 ロン毛「待て!」


 虹「……!」


 虹は泣きながら走り出した。


 七色の光が雨の中へ溶けていく。


 ロン毛「虹!」


 虹「……!」


 ロン毛「待ってくれ!」


 虹「知らない!」


 虹「もう知らない!」


 そのまま。


 虹の姿は、激しい雨の向こうへ消えてしまった。


 ロン毛「……。」


 雨だけが降り続く。


 風も。


 電柱も。


 誰も何も言わない。


 ロン毛「……なんだよ。」


 ロン毛「なんなんだよ……。」


 初めてだった。


 虹が怒ったのは。


 初めてだった。


 虹が泣いている姿を見たのは。


 そして。


 初めてだった。


 ロン毛が。


 虹を失うことを恐れたのは。


 激しい雨は夜まで降り続いた。


 まるで。


 空そのものが泣いているようだった。

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