第43話 虹は笑う
春の日差しが心地よい午後。
桜の下で花見をした翌日、ロン毛と虹は商店街を歩いていた。
虹「人間ってすごいね!」
ロン毛「何が?」
虹「お店いっぱい!」
虹「人いっぱい!」
虹「いい匂いいっぱい!」
ロン毛「元気だな。」
虹「えへへ!」
虹はキョロキョロと辺りを見回している。
初めて見るものばかりなのか、いちいち目を輝かせていた。
虹「あ!」
ロン毛「ん?」
虹「見て!」
虹が指差した先には、小さな和菓子屋があった。
店先には三色団子が並んでいる。
虹「かわいい!」
ロン毛「団子?」
虹「かわいい!」
虹「丸い!」
虹「ピンク!」
虹「白!」
虹「緑!」
虹「かわいい!」
ロン毛「食うか?」
虹「いいの!?」
ロン毛「まあ、三本くらいなら。」
虹「やったー!」
ベンチに腰掛け、二人は団子を食べる。
虹はしばらく団子を見つめていた。
ロン毛「食わないのか?」
虹「かわいそう。」
ロン毛「なんで。」
虹「かわいいから。」
ロン毛「食べ物だぞ。」
虹「そうだった!」
虹は一口かじる。
虹「!」
虹「おいしい!」
ロン毛「よかったな。」
虹「すごい!」
虹「人間すごい!」
虹「なんでこんなおいしいの作れるの!?」
ロン毛「知らん。」
虹「甘い!」
虹「もちもち!」
虹「幸せ!」
ロン毛「大げさだな。」
虹「大げさじゃないもん!」
虹は嬉しそうに笑った。
その笑顔を見て、ロン毛もつられて笑う。
虹「ロン毛!」
ロン毛「ん?」
虹「人間って楽しい!」
ロン毛「そうか。」
虹「ロン毛といるともっと楽しい!」
ロン毛「そうか。」
虹「もっと笑って!」
ロン毛「笑ってる。」
虹「足りない!」
ロン毛「無茶言うな。」
虹「えへへ!」
その時。
風「楽しそうだな。」
ロン毛「おう。」
虹「風さん!」
風「団子か。」
虹「おいしいよ!」
風「私は食えん。」
虹「残念!」
ロン毛「気の毒だな。」
風「まあ、お前らが笑ってるならそれでいい。」
虹「笑うの好き!」
ロン毛「そうか。」
虹「ロン毛は?」
ロン毛「まあ、嫌いじゃない。」
虹「じゃあ、もっと笑おう!」
ロン毛「なんだそれ。」
虹「笑うと楽しいから!」
ロン毛「単純だな。」
虹「うん!」
虹は満面の笑みを浮かべた。
春風が吹く。
花びらが舞う。
人々が行き交う。
そして。
ロン毛は思う。
不思議なやつだな、と。
よく笑う。
よく喋る。
なんでも楽しそうにする。
子供みたいなやつ。
でも。
その笑顔を見ていると、なんだかこちらまで楽しくなる。
虹「ロン毛!」
ロン毛「ん?」
虹「今日も楽しいね!」
ロン毛「そうだな。」
虹「明日も楽しいかな?」
ロン毛「さあな。」
虹「きっと楽しい!」
ロン毛「そうか。」
虹「うん!」
虹は笑った。
そしてロン毛は、まだ気づいていなかった。
自分が、その笑顔を見るのを楽しみにしていることに。




