第4話 雨とロン毛
朝から雨だった。
窓を叩く雨音。
どんよりした空。
ロン毛はベッドの上で天井を見つめていた。
今日は何もしたくなかった。
ギターも弾く気になれない。
散歩もしたくない。
ただぼーっとしていたかった。
すると。
雨 「おはよう。」
ロン毛 「うるさい。」
雨 「ひどい。」
ロン毛 「朝から元気だな。」
雨 「久しぶりに降ったからねん。」
ロン毛 「降らなくていいのに。」
雨 「こうして話すのははじめてだね。」
ロン毛 「そうだっけ。」
雨 「うん。」
ロン毛 「今日は外出たくない。」
雨 「いいよ。」
ロン毛 「いいのか。」
雨 「たまには。」
ロン毛 「珍しいな。」
雨 「みんな頑張りすぎ。」
ロン毛 「そうか?」
雨 「うん。」
雨音が静かに部屋を包む。
ロン毛は布団の中に潜り込んだ。
すると。
雨 「最近、元気ないね。」
ロン毛 「まあ。」
雨 「何かあった?」
ロン毛 「別に。」
雨 「嘘。」
ロン毛 「なんで分かる。」
雨 「私は雨だから。」
ロン毛 「理由になってない。」
雨 「えへへ。」
しばらく沈黙。
そして。
ロン毛 「なんかさ。」
雨 「うん。」
ロン毛 「上手くいかないんだよ。」
雨 「うん。」
ロン毛 「ギターも。」
雨 「うん。」
ロン毛 「仕事も。」
雨 「うん。」
ロン毛 「全部。」
雨 「うん。」
ロン毛 「疲れた。」
雨 「そう。」
ロン毛 「頑張れって言わないのか。」
雨 「言わない。」
ロン毛 「なんで。」
雨 「疲れてる人に、頑張れって言うの嫌いだから。」
ロン毛 「変なやつ。」
雨 「よく言われる。」
雨音が少し強くなる。
窓ガラスを優しく叩く。
雨 「今日は休もう。」
ロン毛 「いいのか。」
雨 「うん。」
ロン毛 「何もしなくて。」
雨 「うん。」
ロン毛 「サボりじゃない?」
雨 「休憩。」
ロン毛 「違いは。」
雨 「明日また歩くため。」
ロン毛は少し笑った。
ロン毛 「なんかお前、優しいな。」
雨 「そう?」
ロン毛 「うん。」
雨 「みんな私のこと嫌いだから。」
ロン毛 「俺は嫌いじゃない。」
雨 「ほんと?」
ロン毛 「静かだし。」
雨 「ふふっ。」
雨 「ありがとう。」
夕方。
雨は少し弱くなった。
雲の隙間から光が差す。
夏の朝 「こんばんは!」
ロン毛 「朝じゃないだろ。」
夏の朝 「細かい!」
ロン毛 「雨、帰るのか。」
雨 「うん。」
ロン毛 「またな。」
雨 「うん。」
雨 「ロン毛。」
ロン毛 「なんだ。」
雨 「晴れの日だけが、いい日じゃないよ。」
ロン毛 「……。」
雨 「また降るから。」
ロン毛 「嫌な予告だな。」
雨 「えへへ。」
夏の朝 「私もいるよ!」
ロン毛 「お前は朝しか来ないだろ。」
夏の朝 「たまには残業!」
ロン毛は吹き出した。
雨上がりの匂いがした。
遠くでセミが鳴いている。
ロン毛は窓を開ける。
少しだけ、ギターを弾いてみようと思った。
雨の日も。風の日も。どんなときも。




