第29話 メリクリ! ケーキ頬張るキズナとの絆
12月のはじめ。
冷たい風が吹く夕方。
ロン毛は、部屋でギターを弾いていた。
くるまえびの飼育も順調、音楽にもお金が使えるようになって新しい弦を買ってしまったのだ。
すると、飼い猫のキズナがこたつの上から降りてきた。
キズナ「またぎたぁ?」
ロン毛「いいだろ。」
キズナ「最近遊んでくれない( ⸝⸝⸝⩌⤚⩌*)」
ロン毛「忙しいんだ。」
キズナ「むー。」
ロン毛「そういう時もある。」
キズナ「知らない。」
キズナはぷいっとそっぽを向いて、窓際に行ってしまった。
ロン毛「なんだよ。」
キズナ「知らないもん。」
ロン毛「怒ったか。」
キズナ「怒ってない。」
ロン毛「怒ってるやつの顔だな。」
キズナ「怒ってない。」
その日の夜。
キズナはロン毛の布団に来なかった。
数日経っても、キズナはどこかよそよそしい。
ロン毛「参ったな。」
散歩に出たロン毛は、いつもの電柱の前で立ち止まった。
ロン毛「久しぶり。」
電柱「久しぶり。」
ロン毛「ちょっと相談がある。」
電柱「久しぶりに会ってそれかい。」
ロン毛「キズナと喧嘩した。」
電柱「ほう。」
ロン毛「最近、構ってやれなかった。」
電柱「人も猫も寂しくなる時はある。」
ロン毛「どうしたらいい。」
電柱「話を聞いてやればいい。」
ロン毛「簡単だな。」
電柱「簡単なことほど難しい。」
ロン毛「そうか。」
電柱「それに。」
ロン毛「なんだ。」
電柱「キズナは毎日、お前の帰りを待ってるぞ。」
ロン毛「そうなのか。」
電柱「見てるからな。」
ロン毛「お前、結構見てるんだな。」
電柱「立ってるだけだからな。」
ロン毛「ありがとう。」
家に帰ると、ギターが小さく弦を鳴らした。
ギター「元気ないな。」
ロン毛「キズナと喧嘩してるじゃん。」
ギター「そうだな。」
ロン毛「俺が悪い。」
ギター「弦も張りすぎると切れる。」
ロン毛「急に深いこと言うな。」
ギター「緩める時間も必要だ。」
ロン毛「そうだな。」
ギター「キズナの気持ちも聞いてみろ。」
ロン毛「そうする。」
だが、キズナはなかなか機嫌を直さなかった。
そして気づけば、街はクリスマスムード一色になっていた。
12月25日。
ロン毛は仕事帰りにペットショップへ寄った。
ロン毛「これください。」
店員「猫用のクリスマスケーキとピザですね。」
家に帰ると、キズナはこたつの中にいた。
ロン毛「キズナ。」
キズナ「なに。」
ロン毛「メリークリスマス。」
キズナ「クリスマス?」
ロン毛「お前に買ってきた。」
キズナ「なにこれ。」
ロン毛「猫用ケーキとピザ。」
キズナ「食べれるの?」
ロン毛「この前は悪かった。」
キズナ「忙しかったもんね。」
ロン毛「それでも、寂しい思いをさせた。」
キズナ「ちょっとだけね。」
ロン毛「ごめん。」
キズナ「いい。」
ロン毛「許してくれるか。」
キズナ「最初からそんなに怒ってないもん。」
ロン毛「そうか。」
キズナ「でも。」
ロン毛「なんだ。」
キズナ「たまには一緒に昼寝してね。」
ロン毛「それでいいのか。」
キズナ「うん!」
ロン毛「安いもんだ。」
キズナ「それと。」
ロン毛「なんだ。」
キズナ「食べてもいーい?」
ロン毛「もちろん。」
キズナ「いただきます!」
キズナは夢中でケーキとピザを頬張り始めた。
キズナ「うまい!!」
ロン毛「そんなにか。」
キズナ「最高。」
ロン毛「よかった。」
ギター「仲直りできたか。」
ロン毛「おかげさまでな。」
ギター「よかった。」
キズナ「お前も食べるか。」
ギター「無理だわ。」
キズナ「かわいそう。」
窓の外では雪が静かに降り始めていた。
キズナは満足そうに毛づくろいをしている。
ロン毛はそんな姿を見ながら、ふと笑った。
ロン毛「結局、一番のクリスマスプレゼントはお前かもしれないな。」
キズナ「えへへー。」
ロン毛「調子いいな。」
キズナ「猫だもーん!」
ロン毛「そうか。」
キズナ「来年も一緒ね!」
ロン毛「もちろん。」
キズナ「約束ね!!」
こたつの中で丸くなるキズナ。
暖かい部屋。
静かな雪。
そして、いつもの仲間。
ロン毛「平和が一番だな。」
キズナ「ケーキもう一口。」
ロン毛「食べ過ぎるな。」
キズナ「クリスマスだからいい。」
ロン毛「そうだな。」
ロン毛は笑いながら、窓の外の雪を眺めた。
そうすると携帯の通知がなる。
「釜内実は中華派説ここでも爆誕☆」
釜内「ロン毛の好きなスナックで大晦日みんなで呑もうぜ!」
かいちょ 「いーね!!! 酔っ払ったら幼稚園の園歌歌おうな。」
釜内「覚えてないわww」
ロン毛「12月31日の20時にメゾンモーヴ集合な。」
3人は大晦日に起きる大事件をまだ知らない。




