第23話ぶんぶんぶん ロン毛とはち
秋も深まり、河原のススキが黄金色に揺れる午後。
ロン毛は近所の公園のベンチに座り、エナドリを飲みながらぼんやりと空を眺めていた。
ロン毛「だんだん寒くなってきたな。」
イチョウ「もうすぐ冬だな。」
ロン毛「早いよな。」
すると、どこからか弱々しい羽音が聞こえてきた。
ぶーん……
ロン毛「ん?うわっ、はちか」
ロン毛ははちがちょっと苦手だ。
足元を見ると、一匹のミツバチがベンチの上で休んでいた。
はち「はぁ……はぁ……。」
ロン毛「お疲れさん。」
はち「おお、人間か。」
ロン毛「羽音が元気ないな。」
はち「今日は朝から飛びっぱなしなんだ。」
ロン毛「大変そうだな。」
はち「冬に向けて蜜を集めなきゃならんからな。」
ロン毛「もうそんな時期か。」
はち「仲間もみんな頑張ってる。俺だけ休んでられない。」
ロン毛「でも、少しは休めよ。」
はち「五分だけな。」
ロン毛はエナドリを一口飲んで空を見上げた。
ロン毛「俺も頑張らないとな。」
はち「お前も働いてるのか?」
ロン毛「バイトだよ、くるまえび育ててる。」
はち「それでも立派な仕事だ。」
ロン毛「そうか?」
はち「巣の中じゃ、誰が偉いとかない。みんなそれぞれ役割がある。」
ロン毛「いいこと言うな。」
はち「まあな。」
その時、花壇に咲くコスモスが風に揺れた。
コスモス「今年はたくさん来てくれてありがとう。」
はち「こちらこそ。」
ロン毛「忙しいんだな。」
はち「秋は稼ぎ時だからな。」
ロン毛「人間も一緒だ。」
はち「そうなのか?」
ロン毛「冬になるといろいろ物入りだからな。」
はち「大変だな。」
ロン毛「お互い様。」
少し休んだはちは、羽を震わせながら立ち上がった。
はち「よし、行くか。」
ロン毛「もう大丈夫か?」
はち「ああ。休んだら元気が出た。」
ロン毛「無理すんなよ。」
はち「無理しない程度に頑張る。」
ロン毛「それが一番だ。」
はち「そういやお前、名前は?」
ロン毛「ロン毛ってよばれている。」
はち「変わった名前だな。」
ロン毛「よく言われる。」
はち「俺は七十八号。」
ロン毛「番号なんだ。」
はち「うちの巣じゃ普通だ。」
ロン毛「そういうもんか。」
はち「じゃあな、ロン毛。」
ロン毛「元気でな。」
はちは夕日に向かって飛んでいく。
ぶーん……
その姿を見送りながら、ロン毛は小さく笑った。
ロン毛「みんな冬に向けて頑張ってるんだな。」
イチョウ「お前も頑張れよ。」
ロン毛「そうだな。」
夕焼け空を見上げながら、ロン毛は立ち上がった。
ロン毛「……よし。」
ロン毛「バイトがんばろ。」




