第22話 ロン毛とかなへび
秋風が吹き始めた午後。河原のススキが揺れる中、ロン毛は土手に寝転がりながら空を眺めていた。
ロン毛「秋の空って高いよな。」
ススキ「風が気持ちいい季節だ。」
ロン毛「そうだな。」
その時、草むらから何かが飛び出してきて、ロン毛の膝の上に転がった。
かなへび「た、助かった……。」
ロン毛「おや、初めまして。」
かなへび「初めましてどころじゃない! カラスに追われてるんだ!」
ロン毛「なるほど。」
かなへび「なるほどじゃない!」
ロン毛は立ち上がり、周囲を見回した。
ロン毛「今はいないみたいだな。」
かなへび「ふぅ……。」
ロン毛「落ち着いたか?」
かなへび「なんとか。」
ロン毛「じゃあ座れ。」
かなへび「座るって……。」
かなへびはロン毛の隣にちょこんと腰を下ろした。
かなへび「お前、人間なのに驚かないんだな。」
ロン毛「動物とか草とかと話せるんだ。」
かなへび「便利なのか不便なのか分からんな。」
ロン毛「案外普通だぞ。」
かなへび「その普通は信用ならん。」
二人はしばらく流れる雲を眺めた。
ロン毛「腹減ってるか?」
かなへび「少し。」
ロン毛「虫は用意できないな。」
かなへび「冗談だ。自分で探せる。」
ロン毛「偉い。」
かなへび「自立してるからな。」
その時、赤い落ち葉がひらひらと落ちてきた。
落ち葉「今年もよく働いた。」
ロン毛「お疲れさん。」
かなへび「葉っぱとも話すのか……。」
ロン毛「秋はにぎやかなんだ。」
かなへび「変わったやつだな。」
ロン毛「よく言われる。」
夕方になり、かなへびは立ち上がった。
かなへび「もう行くよ。」
ロン毛「カラスは大丈夫そうか?」
かなへび「うん。もう隠れる場所も分かった。」
ロン毛「それならよかった。」
かなへび「助けてくれてありがとな。」
ロン毛「気にするな。」
かなへび「人間って怖いと思ってたけど、お前みたいなのもいるんだな。」
ロン毛「かなへびも、意外と面白いやつだった。」
かなへび「ははっ。」
少し沈黙が流れる。
かなへび「たぶん、もう会わないと思う。」
ロン毛「そうかもな。」
かなへび「でも、会えてよかった。」
ロン毛「俺も。」
かなへび「じゃあな、ロン毛。」
ロン毛「元気でな。」
かなへびは夕日に照らされた草むらへと走っていった。
ロン毛は小さく手を振る。
ロン毛「また会えたら、その時はよろしく。」
すると風が吹き、ススキが揺れた。
ススキ「いい出会いだったな。」
ロン毛「うん。」
遠くの空は茜色に染まり、秋の虫たちの声が静かに響いていた。
ロン毛「一期一会ってやつか。」
そうつぶやくと、ロン毛はポケットに手を入れ、ゆっくりと家路についた。




