第20話 おいもとロン毛
秋になると、畑ではたくさんの作物が実る。
その中でも、さつまいもは土の中でじっくり育つ。
見えないところで育つというのは、なんだか人間にも似ているのかもしれない。
ある秋の日。
ロン毛は町内会の芋掘り大会に参加していた。
ロン毛 「なんで俺まで。」
町内会長 「若い人手が足りないから。」
ロン毛 「なるほど。」
断れる雰囲気ではなかった。
畑には子どもたちや地域のお年寄りが集まっている。
そして何故かキズナもいた。
キズナ 「おいもー!」
ロン毛 「お前は町内会員じゃないだろ。」
キズナ 「気持ちは会員!」
ロン毛 「そうか。迷子になったら迷子センターいけよ。」
キズナ 「ぱすぽーともってない!」
合図とともに芋掘りが始まった。
ロン毛 「よいしょ。」
土を掘る。
掘る。
さらに掘る。
なかなか出てこない。
ロン毛 「大物か?」
キズナ 「がんばれ!」
ロン毛 「お前も掘れ。」
キズナ 「おててちっちゃいもん!」
すると大きなさつまいもが顔を出した。
キズナ 「でかい!」
ロン毛 「でかいな。」
さつまいも 「苦しゅうない。」
ロン毛 「しゃべった。」
さつまいも 「長いこと土の中にいたからな。」
ロン毛 「そんな理由で?」
さつまいも 「そんな理由で。」
キズナ 「すごーい!」
さつまいも 「よく掘ってくれた。」
ロン毛 「どういたしまして。」
さつまいも 「やっぱ俺食べられるん?」
ロン毛 「それはそう。」
さつまいも 「運命だ。」
どこか悟った顔だった。
昼になると、町内会のみんなで焼き芋を作ることになった。
落ち葉を集め、火を起こす。
アルミホイルに包まれたさつまいもたちが並べられる。
さつまいも 「いよいよか。」
ロン毛 「覚悟決まってるな。」
さつまいも 「美味しく食べてもらえれば本望だ。」
キズナ 「かっこいい!」
しばらくすると、甘い香りが辺りに広がり始めた。
キズナ 「いい匂い!」
ロン毛 「腹減ったな。」
焼き上がった芋を割る。
湯気が立ち上る。
黄金色の中身が顔を見せた。
キズナのために皮を剥く。
キズナ 「いただきます!」
ロン毛 「いただきます。」
ほくほく。
ねっとり。
優しい甘さが口いっぱいに広がる。
キズナ 「おいしい!」
ロン毛 「これはうまい。」
すると、どこからか声が聞こえた。
さつまいも 「どうだ。」
ロン毛 「うまいぞ。」
さつまいも 「そうか。」
キズナ 「また来年も会える?」
さつまいも 「それは分からん。」
ロン毛 「人生みたいなこと言うな。」
さつまいも 「芋生だからな。」
ロン毛 「初めて聞いた。」
帰り道。
夕焼けに染まる畑を見ながら、ロン毛とキズナは歩いていた。
キズナ 「楽しかったね。」
ロン毛 「そうだな。」
キズナ 「おいもって土の中で頑張ってたんだね。」
ロン毛 「見えないところで育ってたんだろうな。」
キズナ 「私も育ってる?」
ロン毛 「たぶんな。」
キズナ 「やった!」
秋風が吹く。
収穫の終わった畑が静かに揺れた。
ロン毛 「また来年も芋掘りするか。」
キズナ 「する!」
そうして二人は、焼き芋の甘い香りを思い出しながら家へと帰っていった。




