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虹とロン毛  作者: かいちょ
第1章 自然との日常
12/70

第10話「雲とロン毛」

昼下がり。

河川敷。

青い空。

白い雲。




ロン毛は寝転んでいた。

ギターケースを枕にして。


何もしたくない日だった。

空を見ていた。

ただぼーっと。



すると。

雲「見てる。」

ロン毛「見てる。」

雲「何考えてる。」

ロン毛「何も。」

雲「嘘。」

ロン毛「ばれた?」

雲「顔に書いてある。」

ロン毛「便利だな。」

雲「風に聞いた。」

ロン毛「情報共有するな。」

雲「てへ。」




しばらく沈黙。

鳥が飛ぶ。

遠くで電車の音がする。





ロン毛「最近。」

雲「うん。」

ロン毛「なんか焦る。」

雲「うん。」

ロン毛「周りが進んでる気がする。」

雲「うん。」

ロン毛「自分だけ止まってる。」

雲「止まってない。」

ロン毛「そうか?」

雲「うん。」

ロン毛「なんで。」

雲「見てるから。」

ロン毛「またそれか。」

雲「毎日見てる。」

ロン毛「監視社会だ。」

雲「空社会。」

ロン毛は少し笑った。

ロン毛「みんなすごいんだよ。」

雲「うん。」

ロン毛「結婚したり。」

雲「うん。」

ロン毛「バイトしてたり。」

雲「うん。」

ロン毛「夢叶えたり。」

雲「うん。」




ロン毛「俺、昼寝してる。」

雲「いいじゃん。」

ロン毛「よくない。」

雲「なんで。」

ロン毛「置いていかれる。」

雲「誰に。」

ロン毛「世間。」

雲「世間って誰。」

ロン毛「知らん。」

雲「知らない人に急かされてるの?」

ロン毛「そうかもしれん。」

雲「変なの。」

ロン毛「変だな。」

風が吹いた。


草「昼寝しそうな大人いて草www」

ロン毛「またお前か。」

草「元気?」

ロン毛「ぼちぼち。」

草「それで十分。」

ロン毛「適当だな。」

草「草だから。」

空を見上げる。

雲がゆっくり流れる。

ロン毛「お前。」

雲「うん。」

ロン毛「どこ行くんだ。」

雲「知らない。」

ロン毛「知らんのかい。」

雲「風まかせ。」

ロン毛「不安じゃない?」

雲「不安。」

ロン毛「あるんだ。」

雲「ある。」

ロン毛「でも平気なのか。」

雲「うん。」

ロン毛「なんで。」

雲「止まっても。」

ロン毛「うん。」

雲「流れても。」

ロン毛「うん。」

雲「雲だから。」

ロン毛「深いようで浅い。」

雲「ふわふわだから。」

ロン毛「確かに。」





ロン毛「なあ。」

雲「うん。」

ロン毛「人生って。」

雲「うん。」

ロン毛「正解あると思う?」

雲「ない。」

ロン毛「即答だな。」

雲「空に道はない。」

ロン毛「うん。」

雲「なのに人は道を作る。」

ロン毛「うん。」

雲「迷っても。」

ロン毛「うん。」

雲「遠回りしても。」

ロン毛「よく分からん。」

雲「私も。」

ロン毛「おい。」

雲「でも。」

ロン毛「うん。」

雲「分からないまま生きるのも、悪くない。」

ロン毛「そうか。」

雲「うん。」



遠くで子供の声。

犬の鳴き声。

飛行機雲。


ロン毛「今日。」

雲「うん。」

ロン毛「何もしなかった。」

雲「した。」

ロン毛「何を。」

雲「空見た。」

ロン毛「それだけ。」

雲「大事。」

ロン毛「そうか。」

雲「疲れてる時は。」

ロン毛「うん。」

雲「頑張るより。」

ロン毛「うん。」

雲「空を見る日があってもいい。」

ロン毛「贅沢だな。」

雲「空は無料。」

ロン毛「助かる。」

雲「サブスクなし。」

ロン毛「最高だな。」



二人は笑った。

夕方。

雲が赤く染まる。

ロン毛は起き上がった。

ギターケースを背負う。

ロン毛「帰るか。」

雲「またね。」

ロン毛「また会える?」

雲「毎日いる。」

ロン毛「同じ雲じゃない。」

雲「ロン毛も昨日と同じじゃない。」

ロン毛「そうか。」

雲「少しずつ変わる。」

ロン毛「それでいいか。」

雲「それがいい。」

ロン毛「ありがとう。」

雲「どういたしまして。」



空を見上げる。

さっきまでいた雲は、

もう違う形になっていた。

でも。


確かにそこにいた。

空を見上げる余裕があるなら、

まだ大丈夫。


雲は形を変えても、

空からいなくなるわけじゃない。

人もきっと同じだ。

大人になっても、何者かになれなくて焦る日がある。

でも。

空を見て、

ぼーっとできる日は、

案外悪くない。

そんなもんだ。

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