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虹とロン毛  作者: かいちょ
最終章 ロン毛の決断、そして未来へ
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最終話 第100話 ロン毛と虹

数十年後。


季節は秋。


夕暮れのニュース番組では、今年の紅白歌合戦の出場歌手が紹介されていた。


そこに映るのは、一人の男。


少し長い髪。


優しい目。


若い頃の面影を残したまま、大人になった男。


かつて「ロン毛」と呼ばれていた青年。


今年、四十五歳。


長年活動を続けてきた彼は、多くの人々に愛される歌手となり、今年も紅白歌合戦への出場が決まっていた。


彩「お父さん、今年も紅白だね!」


十七歳になった娘、木谷彩が嬉しそうに笑う。


彩「もう何回目?」


ロン毛「七回目くらいかな。」


彩「すごーい。」


隣では妻の木谷朱子が微笑んでいる。


朱子「初めて出た時なんて、本番前に全然寝られなかったのに。」


ロン毛「今でも寝られないよ。」


ロン毛は苦笑する。


ロン毛「緊張するもん。」


辰哉「お父さん、毎年同じこと言ってる。」


十二歳になった息子の木谷辰哉(しんや)が笑った。


辰哉「でも父さん、ステージ出るとすごいよな。」


ロン毛「そうか?」


辰哉「うん。家にいる時と全然違う。」


辰哉「家ではただのお父さんだからな。」


家族四人の笑い声が響く。


その日はライブの帰りだった。


雨上がりの街。


夕焼けに染まる雲。


涼しい風。


歩道を歩きながら、他愛もない話をしていた。


彩「あ!」


彩が足を止めた。


彩「お父さん、虹!」


空には大きな虹が架かっていた。


雨上がりの夕空を横切るように、


七色の光が広がっている。


ロン毛「ほんとだ。」


ロン毛も立ち止まる。


朱子「綺麗……。」


朱子が空を見上げる。


辰哉も目を輝かせる。


辰哉「でっけぇ!」


ロン毛は虹を見つめた。


不思議だった。


昔から虹を見ると、


胸が少し温かくなる。


懐かしいような。


大切な何かを思い出しそうな。


そんな気持ちになる。


けれど、


何を思い出したいのかは分からない。


ただ、


とても優しい気持ちになる。


ロン毛は小さく笑った。


ロン毛「虹って綺麗だな。」


その瞬間。


優しい風が吹いた。


木々が揺れる。


秋の匂い。


どこか遠くで鳥が鳴く。


そして、


空の向こう。


七色の光の中。


一人の少女が、優しく微笑んでいた。


虹。


その隣には、


調和を司る者、アシス。


記憶を司る者、ナムネ。


三人とも穏やかな表情だった。


虹 「幸せになったね。」


アシス 「よく頑張ったな。」


ナムネ 「これでいいんだよ。」


風と一緒に、


そんな声が聞こえた。


ロン毛「……ん?」


ロン毛は空を見上げる。


朱子「どうしたの?」


朱子が尋ねる。


ロン毛「いや……。」


ロン毛「なんか今、誰かに褒められた気がして。」


朱子「ふふっ。」


朱子「疲れてるんじゃない?」


ロン毛「そうかもな。」


そう言って笑った。


でも、


なぜか涙が一粒こぼれた。


彩「お父さん?」


彩が心配そうに顔を覗く。


ロン毛「大丈夫。」


ロン毛「なんでもない。」


ロン毛「なんか……幸せだなって思って。」


辰哉が笑う。


辰哉「変なの。」


辰哉「父さん、急に泣くなよ。」


ロン毛「歳かな。」


朱子「まだ四十五でしょ?」


朱子も笑った。


四人は顔を見合わせる。


そして、


声をあげて笑った。


その光景を、


七色の空の向こうから虹は見つめていた。


虹「よかった。」


虹「本当によかった。」


アシスも微笑む。


アシス「長い旅だったな。」


ナムネは涙を浮かべる。


ナムネ「みんな幸せになった。」


ナムネ「だから、もう大丈夫。」


虹はロン毛を見る。


もう自分のことは覚えていない。


自然たちの声も聞こえない。


不思議な力もない。


ただの人間。


でも、


大切な人たちに囲まれて、


笑っている。


それだけで十分だった。


虹は少し寂しそうに、


でも幸せそうに笑った。


虹「ありがとう。」


虹「ロン毛。」


虹「あなたに会えて、本当に幸せだった。」


そして、


昔と変わらない笑顔で、


小さく手を振る。


虹「さようなら。」


虹「大好きなみんな。」


虹「そして……。」


虹「幸せになってくれて、ありがとう。」


夕焼けの中、


大きな虹はゆっくりと薄れていく。


ロン毛は空を見上げながら、


優しく笑った。


ロン毛「また明日も頑張るか。」


みんな「うん!」


辰哉「お母さん、お腹すいた!」


朱子「今日はハンバーグよ。」


辰哉「やったー!」


辰哉「父さん、早く帰ろう!」


ロン毛「はいはい。」


家族四人は笑いながら歩き出す。


子供たちの声。


秋の風。


夕焼けの匂い。


そして、


どこまでも続く七色の空。


かつて電柱の下で一人だった青年は、


たくさんの出会いと別れを経て、


ようやく幸せを見つけた。


もう奇跡はいらない。


もう不思議な力もいらない。


大切なものは、


ずっとそばにあった。


夕暮れの空に最後の光が差し込む。


その向こうで、


虹とアシスとナムネが、


優しく微笑んでいた。


そして七色の空は、


どこまでも、


どこまでも続いていた。


― 完 ―

『虹とロン毛』


原作 かいちょ


ありがとう。

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