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「なあ、俺らってダンジョンの調査にきたんだよなぁ?」
「ん〜? そうだな」
「……」
調査隊の一員として、街から歩いて数時間の距離にある森の中で発見されたダンジョンに向かったのが約ひと月前。
一階層はだだっ広いだけで角兎しか出てこない、ただ豊富な薬草が手に入る初級者向けの階層で。
二階層は複雑な迷路に数種の罠が仕掛けられてはいるが、モンスターの類は出て来ない。
だがなぜか宝箱から水と食い物が出てくるという、こちらも初級者向けの謎階層。
そして現在、三階層。
何というか、俺達はかつてない程に寛いでいた。
バーベキューゾーンで腹を満たした後、受付に戻ってスウィートヴィラを案内してもらい、荷物を置いてから『露天風呂』なる風呂にのんびり浸かって、涼み処の『人をダメにするクッション』に座り冷たいビールを飲んでいる。
「もうずっとここにいたいかも」
誰かがボソッと呟いた言葉に皆が静かに頷いた。
スウィートヴィラは新しく建てたばかりのようで、足を踏み入れた瞬間に微かにだが木の香りがしていたし、ベッドは普段使っている硬いだけのものとは違って硬過ぎず柔らか過ぎず弾力があり、もう全くの別物と言えた。
天井は高くて部屋も広く開放感があって、これがタダとか絶対ありえないだろ。何か裏があるに違いない。
それを証明するために風呂にも行ってみるか、と皆でゾロゾロと向かった露天風呂は、控えめに言って最高だった……。
しかも涼み処の、人をダメにするクッション?
これがまた体を優しく包み込んでくれて、ここから動けなくしている。
もう正直、裏だの表だのはどうでもよくなっていた。
街で生活するには宿代と外食代が結構かかる。
ひと月にかかる金額は、平均的な宿代として金貨15枚、外食代が金貨6枚〜10枚ほど。
冒険者のひと月の稼ぎは初級で約金貨20枚と言われており、中級は依頼の内容にもよるが大体金貨30枚〜80枚、上級ともなれば金貨3桁を超える。
はっきり言って、初級のうちはカツカツだ。
ここでは宿代が掛からないから、食事代だけで済む。しかも街中よりも美味くて安い!
初級者達には夢のような空間だろう。
いや、中級冒険者の俺にとってもだが。
ひと月か二月ここで暮らして、帰り際に一階層で単価の高めな薬草を摘みながら街に戻り、依頼をこなして金を貯め、そしてまたここに戻る。
そんな生活が出来たら最高ではないだろうか。
チラリと横に視線を向ければ、隣で寛いでいる仲間もこちらを見て、頷いた。
ああ、これ、皆が同じことを考えているな……。




