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この先イケメンが大吉と呼ばれ続ける状況を想像し、それは(俺の腹筋が)耐えられないと思って口を開く。
「……あのさ」
「何じゃ?」
「その『大吉』って名前だけど、俺はやめておいた方がいいと思う」
「「なぜじゃ(だ)?」」
「もし俺が、『今日からお前の名前はハッピーな』って言ったら?」
「は? それはペットにつける名前じゃろ?」
一瞬『何を言っているんだ、コイツ』という顔をした婆さんとイケメンだったが、直ぐに俺が言いたいことに気付いたらしい。
「もしかして、そういう感じなのか?」
まあ、若干違うが説明が面倒くさいので静かに頷く。
これで、意味としては良くても人の名前にしたらちょっと微妙な感じ、くらいに思ってもらえたのではないだろうか。
東の大陸がどんな所かなんて知らないし、もしかしたらたまたま『大吉』って言葉が日本語と同じだったのかもしれない。
だけどさ、異世界召喚なんて魔法があるこの世界で、俺より昔に召喚された日本人が他大陸に複数いたっておかしくない。
その日本人達の子々孫々によって日本語が受け継がれている……なんて、絶対にないとは言いきれないだろ?
まあ、日本みたいな国があるのだとしたら、この目で見てみたいと思うけどさ。
でも俺はダンジョンから出ることは出来ても、離れている隙にコアが破壊されたら死ぬ。
海向こうの大陸に行こうとしたら長期間ダンジョンから離れることになり、リスクが大き過ぎるんだよな。
……そんなわけで、俺はダンジョンマスターである限り遠出は出来ないのだ。
「どうしても東の大陸風な名前にしたいんなら、黒曜とかはどうかな? 黒曜石って黒い石からもじってみたんだけど。石の意味は確か、『真実の追求』とか『潜在能力の開花』とかだった気がするな」
ちょっと厨二病臭い感じがしなくもないが、それは言わなくてもいいだろう。
「あと『魔除け』の意味もあったかな。あ、悪魔族的に魔除けはマズイか?」
「いや、別に大丈夫だ。コクヨウか……。その名にしよう」
「え? いいの? そんな簡単に決めて」
ていうか、さっきも簡単に婆さんが言った『大吉』に決めようとしてたからな、このイケメン。
結構ちゃっかりしてるヤツだと思ったけど、意外と何も考えてない脳筋だったりするのか?
本人が黒曜でいいって言うなら、他にいい候補なんて絞り出しても出てこないから決めちゃうけどな。
「んじゃ、黒曜で決定」
婆さんとイケメンが頷いた。
ちなみにNPCは婆さんが一番近くにいて名前を呼ぶだろうからと丸投げしたら、ドーシルになった。
どっかの言葉で『従順』て意味らしい。
婆さんらしいというか、何というか。




