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激しく脈打つ心臓に手を当て、何とか気持ちを落ち着かせようと、大きく息を吸って、吐く。
徐にスクリーンに映る残り一枚のカードをタップして現れたのは……。
「……賢、者?」
どうやら俺は最後の一枚にして、求めていた『会話の出来る人型モンスター』という当たりを引いてしまったらしい。
「神は俺を見捨てなかった……」
胸の前で手を組み、神に感謝の気持ちを捧げる。
嗚呼、俺の人生はようやくプラスに転じ始めたらしい。
不運な俺よ、さようなら!
テンション高く喜びの舞いを舞う俺の視界に、ゴブリンとコボルトの後ろに隠れるようにして立つ黒いローブ姿が映った。
きっとそれが賢者、なの、だろ……う?
違和感に動きを止める。
「何か、小さくね?」
背の高さが、子どもサイズのゴブリンとあまり変わらない。
どこかのスケベでファンシーな仙人が持つような杖を持ち、ずっと俯いているように見える。
あれ? もしかして、気分が悪いとか?
俺は慌ててゴブリンをかきわけ、賢者の前に立って「大丈夫か?」と声を掛けた。
そして賢者が「ん?」と上げた顔を見て固まる。
なぜなら。
ローブの中身はミイラと見紛うような、シワシワの顔をした腰の曲がった婆さんだったのだから……。
「ミイラ?」
無意識にそう口にしていたらしい俺の頭に激痛が走った。
どうやらこの婆さん賢者に杖で殴ら……叩かれたらしい。
思わず両手でそこを押さえながら、「ぐおぉぉぉ」と低く呻いてゴロゴロと床を転げ回る俺。
婆さん賢者は「ふぉっふぉっふぉ」と楽しそうに笑っている。
そして目敏く俺の『人をダメにするクッション』を見つけると、テクテクと歩いていき、
「よいしょ、っと」
と勝手に座ってしまった。
「ふむ、これはなかなかに座り心地が良いねぇ。でも……高さ的にちょいと立ち上がるのが辛いかもしれないねぇ」
そう言ってチラリと俺に視線を向ける。
え? 何? これって俺に立ち上がるのに手を貸せって言ってるのか?
それとも立ち上がる時に辛くならないクッションを出せって言ってるのか?
ようやく頭の痛みが引いてきた俺は、半分涙目で婆さん賢者の意図を測ろうとするも、よう分からん。
もう、両方って事でいいか。
「もうちょっと高さのあるやつを出せばいいのか?」
「おや、出してくれるのかい? ありがとうね」
出してくれるのかい? じゃねぇよ!
出させる気満々だっただろうが。
……俺の人生プラスに転じ始めたとか、不運な俺よさようなら、なんて思ったけど。
これ全然プラスに転じてないし、不運とさよならしてねぇだろ!




