3
村の門まで来ると、先ほど何でも屋に連れて行ってくれた門番らしき男が立っていた。
そういえば、いつの間にかいなくなってたけど、ここに戻ってきてたのか。
男は俺に気付くと「ちゃんと売れただろ?」とニカッと笑う。
「お陰様で、ありがとうございました」
「いいってことよ。それより飯は食ってかなくて大丈夫なのか?」
……飯、か。この世界の料理に興味がないわけじゃないけど、十数時間掛けて歩いて得た金を使ってまで食べたいかといえば、そこまではって感じかな。
というより、今の俺の全財産は銀貨二十枚なわけで、ある程度貯めこむまでは節約必須。
腹が減ったらアイテムボックスの中におにぎりがあるし、何より――。
「ゆっくりしたいのは山々なんですけど、生憎と次の予定があって」
少しでも早くコア部屋に戻って、ベッドで横になるっていう予定がな。
実はコア部屋のベッドを選ぶ際に何種類か選択出来るようになっていて、そのうちの一つが庶民ベッド(干し草や藁を詰めたマットレス)って書いてあったのだ。
速攻貴族用ベッド(寝心地の良いマットレス)をポチッたわ。
干し草や藁のマットレスじゃ、疲れが取れる気がしねぇよ。
「そうか、残念だな。因みに俺のオススメは『ゆりかご亭』って宿屋の煮込み料理だ。次来る時にはぜひ食ってみてくれ」
いつ来られるかは分からないが、その時までにはオススメ料理を躊躇なく頼めるくらいの金は貯めておこうと思う。
「ゆりかご亭の煮込み料理ですね。次が楽しみになりました。ありがとうございます」
「おう、気をつけてな」
「はい!」
こうして俺は、滞在時間数十分でゼイル村を後にした。
「……足が痛ぇ」
足の裏はもちろんの事、膝にも負担が掛かっているみたいだ。
行き以上に休み休み歩いてはいるけど、慣れない疲れはそれだけでは回復してくれないらしい。
「アイテムボックスも鑑定もすげぇありがたいスキルだけどさ、こうなると転移魔法も欲しかったよなぁ」
あおをギュッと抱きしめて、ポヨポヨの感触を堪能しながら愚痴をこぼす。
この世界の移動手段といえば徒歩か馬車か馬に乗るかの三択で、転移魔法というのは個人で使うものではなく、複数人の魔術師が魔法陣に魔力を注いで使うものらしい。
コア曰く、DPさえあればダンジョン内に転移魔法陣を設置することは可能だが、ダンジョン外には設置出来ないのだとか。
まあ、そんなものを外に設置出来たら、敵が入り込み放題になってしまうからな。
仮に出来たとしても、そんな自分の首を締めるようなことは絶対にしないけどな。
「……もう歩きたくねぇよ」
歩くのは嫌いじゃなかったが、村までの往復でちょっとだけ嫌いになった。




