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「お邪魔しま〜す」
小さく呟きながら恐る恐る店内に入ると、何でも屋と言うだけあって、様々なものが棚や壁一面に並べられている。
初めて目にする使い方の分からない物もあり、しげしげと観察するように見ている俺に、老人が声を掛けた。
「それで? 兄さんは何が欲しいんだ?」
「あ、いや、買う方じゃないんだ。これを売りたくて……」
バッグから出すフリをして、アイテムボックスからとり出した薬草数種類を机の上に置く。
ちょっと珍しい薬草も入れておいたから、そこそこの値段になるはずだ。
「薬草か」
老人が「どれどれ」と薬草を手にとり、状態を確認している。
「ほほぅ、どれもすこぶる状態がいいな。……これなら全部で金貨二枚ってところだろう」
金貨二枚ってことは、日本円換算で二万円くらいか。
俺が「じゃあ、それで」と頷きかけた時、
「だが、本当にいいのか?」
と老人に聞かれた。
何がだ? と首を傾げる俺に、老人は呆れながらも丁寧に説明してくれた。
「あのな、この薬草を少し先の街に持って行けば、金貨二枚と銀貨三枚にはなるはずだ。大抵の者達はそれが分かっているから、この村に素材はおろさず街で売るんだ」
確かに、半日歩いた先に高く買ってくれる所があるなら、皆そっちで売るだろう。
けど俺はその街に入る金がないからこの村に来たんだけど。……なんて言わないけどな。
「わしら村の人間からしたら、売ってもらえるなら助かるんだがね」
街から薬草、或いは薬を仕入れるとなると、それだけ高くなる。だから、出来ればここで売ってほしい、と。
なら確認なんてせず、黙って金貨二枚で買取ればいいのに。
俺はこの一見気難しそうに見える老人に好感を持った。
「買取をお願いします」
老人は少しだけ驚いたような顔をして、言葉少なに「ああ」と言ってちょっとだけ嬉しそうに口角を上げた。
「そうだ、出来たら銀貨で受け取りたいんですが……」
「ああ、構わんよ。ほれ、銀貨二十枚じゃ」
「二十枚、確かに」
ようやく無一文から脱出出来てホッと胸を撫で下ろす。
これでやっと街のギルドに登録出来る! ああ、頑張ってここまで歩いた甲斐があった。
……また歩いて帰らないとだけど。
「朝早くからありがとうございました」
「いや、何かのついでにまた村に寄って売ってくれると助かる」
「はい、また来ます」
俺はペコリと頭を下げて、店を後にした。
さすがに片道半日以上の距離をそうそう簡単に行き来出来るとは思わないけど、また来たいと思ったのは本心だ。




