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「や、やっと着いた……」


 昼過ぎにコテージを出て、今は体感で翌朝八時頃だろうか。

 歩いて十二時間だったはずだが、ここまでの長距離を歩くことなどなかった俺は、途中休憩を何度も何度も挟みながら、ようやく目的地であるゼイル村を視界に捉えた。

 多分あおがいなければ、早々に引き返していたかもしれない。


「あおがいてくれて助かったよ。ありがとう」


 お礼を言いつつ撫でると、あおがプルプルと震える。これは喜んで……いるんだよな? そうだと思いたい。

 木材で拵えた簡易的な門の横に、門番らしき男が立っているのが見える。

 男が俺とあおに気付いて尋ねてきた。


「旅人かい? その、兄さんの肩に乗っているのはスライムだよな?」

「はい、このスライムは俺のペットであおと言います」


 ペットと聞いて、男の目が少し残念なものを見る目に変わって見えたのは、気のせいということにしておこう。


「それで? こんな田舎の村に何の用だい?」

「実は路銀が底を尽いてしまったので、こちらで素材を換金してもらおうと思って」

「おやおや、生憎この村にはギルドや素材屋なんかはなくて、何でも屋が一件あるだけだ。モノにもよるが多分扱ってくれるんじゃないか?」


 そう言って門戸を開けると、村の奥にある建物を指差した。


「ありがとうございます。でもまだお店の開く時間じゃないですよね?」


 コンビニみたいに二十四時間営業している店なんてないだろうしな。


「あ〜、そうだな。路銀が底ついてんなら食堂で朝食食いながら時間潰すってのも出来ねぇか……。よし、俺についてこい」


 言うが早いか、男はスタスタと門戸を潜り、何でも屋に向かって一直線に進む。


「え?」


 突然ついてこいと言われて一瞬迷うも、気を取り直して言われた通りついていくことにしたのだが……。

 男が大きな声を上げながら、何でも屋の扉を力任せにドンドン叩く。


「お〜い、爺さん。生きてるかぁ?」

「ちよっっ!」


 突然のことに止める間もなかった。ていうか、俺にはムリ、止められんて。

 まさかの強行突破に思わず固まっていると、中から怒鳴る声が聞こえた。


「うるせぇ! 生きとるわ!」


 鍵を開ける音に続いてギィィという軋む音と共に扉が開き、眉間に皺を寄せた不機嫌そうな老人が顔を出した。


「おう、爺さん。客連れて来たぜ」

「客? こんな時間にか?」


 眉間の皺が更に深くなるのを見て、


「こんな朝っぱらから、すみません!」


 と慌てて頭を下げて謝罪する。

 心の中の俺が『いや、俺だってまさかこんな時間に強行突破する羽目になるとは思ってなかったんだよぉ』と半泣きしている。

 老人は仕方ないとばかりに小さな溜息を一つつくと、


「中に入りな」


 と顎で中を指した。

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