4話・理解
港の大きめの帆船に、彼はいた。
くすんだ金の髪に、青白い肌。
細い手足には枷があって痛そう。
「ありゃあ奴隷だ。お嬢」
「良くて囲われるか俺達のように剣奴だろうが・・・あの眼は」
赤い瞳はとても綺麗で、もっと近くでみたいと思ったし、笑顔もみたいと思った。
だって、私よりちっちゃい子だもの!
「あの帆船、奪うか」
ニヤリと笑ったのは銀の短髪で小さいのから大きなものまで沢山傷があるおっきな男の人だ。
「《傷》よ、しかしながら帆船を奪うのは大変難しいものだとおもうぞ」
「《獅子》、てめえにしては弱気じゃねーか」
「我々は、問題なかろうが嬢は荒事になれていまい」
私を見下ろし、耳をへにゃりとさせたのは、金の鬣がカッコいいライオンの獣人だった。
「うーん、多分大丈夫だよ。
早くこの国を出ないと捕まっちゃうもの」
せっかくコロシアムから抜け出したのに、捕まったら何をされるか分からない。
「それに」
「?」
「イケる気がする」
戦いに対する心積もりの話ではなく、純粋に戦えるかどうかと聞かれたら、すぐに頷ける。
伊達に、あの学校に通ってない。学んでいたのは、教養だけではないのだ。
ふと、両手を見下ろしたとき、能力者の担任の言葉が、よみがえった。
私たちが能力を発現したとき、その使い方は長短あれど時間と共に脳が理解する、と。
チリッと肌が粟立つ。能力の発現を確認した時といい、つくづく、タイミングが良いのか悪いのか。
「グダグダしてる暇はねーぜ!おい、どうする!」
傷のお兄さんが叫ぶ。
「頃合いは、任せていい?お兄さん逹・・・は?」
と話し掛けた時、あの金髪の子が蹴飛ばされたのが見えた。
「ヤっちゃおう」
「お嬢・・・?」
皆がざわりとしたのが分かった。
「大のおっさんが、ちっちゃい子蹴るなんて、サイテー」
イラッとした。
傷だらけの人とライオンの獣人さんが驚いたように此方をガン見しているのが分かる。
「弱いものイジメヨクナイ」
手を前に差しだした。
能力の使い道は、脳が理解した。タイミング!
差しだした両手に、全身の血が集まっている感覚。
「おい、船の回り!!?」
叫んだのは傷のお兄さん。
見開く目は、船を睨むように現れた水の龍を見たからだ。
「初めてだから、ずんぐりむっくりな龍になっちゃった」
ひょろいのイメージしたのに。
「お嬢は水術遣いか?」
眼帯マッチョさんの疑う眼差しに首を振る。
「イメージ力さえあれば意外と便利な《重力》の能力者みたいだよ」
「スズ、包帯巻いてくれや」
「キッド、また怪我したの?」
「おう。レオンと試合した」
「レオンさんと試合ね。試合が死合になったんじゃないの?」
「まあな。本気じゃねーとつまんねーからな」
ニヤリと好戦的に笑う傷のお兄さんことキッドに、困ったお兄さんだとため息を吐く。
「嬢、キッドの手当てなどしなくていい。自業自得なのだ」
「レオンさん」
溜め息混じりにやってきたのは、すでに治療を済ませた獅子の獣人、レオンさんだ。
「血の気の多い獣のような男だ。血が少ないくらいで丁度良い」
「あ?服が汚れちまうじゃねーか」
「いやいや、服の問題じゃないよね・・・?」
「あ?重要だろ」
きょとんとするキッドに、レオンさんと顔を見合せ溜め息を吐いた。




