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僕らのガッカリ桜  作者: ゆらゆらゆらり
中岡勝太編
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46/58

1番 外野手 龍岡竜也

 最初に右打席に入ったのは、長身のたっちゃん(龍岡竜也)。自称ヒットメーカーだ。左右どちらでも打ちわけられ、ヒットならいつでも打てると豪語する。

 確かにバットコントロールはいい。だが、弱点が。


 外角にフォークボールを投げると、ライト方向にフェンスネット下まで簡単に打ち返されてしまった。

 今日は握りを浅くして、スピードを乗せてみたが、それでも通用しないか。


「ほら、どんどんきやがれ!」


 これで、ノーアウト、ランナー1塁という状況だ。


 ここは真ん中高めと低めにボール球を投げてみる。

 しっかり見極められてしまう。


 もうひとつ外角高めにボール球を――たっちゃんは長い腕を伸ばし、バットを振りきった。


 鋭いライナーがライト側のフェンスネットに突き刺さった。

 後少し上ならホームランだ。


「くそっ! あとちょいか」


 そんな声が聞こえてくる。

 たっちゃんは悔しがりながらも、顔はにやにやしている。


「今日の俺は違うぜよ。秘密特訓を積んできたからな」


 俺は、その言葉に、にやりとしてみせる。望むところといった感じだ。


 ランナー1、2塁。気を引き締めないとならない。

 昨日までは春の嵐の影響でこの水捌け最悪のグランドはなかなか使えなかった。それに新入生の勧誘などでバタバタもしていた。

 思えば対決は1週間ぶりか。


 この期間、本当にどこかで練習していたのかもしれない。確かに振りが鋭い気がする。


 ならば、近頃は封印していたこのコース。

 右腕を思いっ切り振り、遅いながらも渾身のストレートで内角をえぐった。いや、内角どころか、たっちゃんの背中のほうを通り、ネットにも当たらずに飛んでいってしまった。


「危ねえなっ!」


 俺は帽子を取って頭を下げる。わざとらしく深々と。そして、頭を上げれば、「当てなかったんだから、うだうだ言うな!」


 籠からボールを取り出し、構える。

 たっちゃんは、うっ、と顔をしかめ、バットを構えた。


 さあ、秘密特訓とやらで、こっちは克服できましたか。


 今度はしっかり内角をえぐるようにシュートボールを投げ込んだ。

 バットは動かず、ストライクシートを外れてネットに刺さる。

 今度は内角ストレート――見逃しストライク。

 そして、次は外角ぎりぎりのストライクゾーンへ。


 ぼてぼてのゴロゴロがグローブにおさまった。


 同じ感じで、2アウト、3アウト。


 たっちゃんは、天を仰いで、悔しさのこもった雄叫びを上げている。


 内角恐怖症は、やはりそう簡単には治らないということか。内角への見せ球で、腰が引けて、完全に手打ちになっていた。


 昔、俺が冗談交じりで内角びびり症だなと言ったことがあったが、「うっせえ!」のひと言で、はぐらかすように話を変えられてしまっていた。

 だから、理由はわからないが、苦手以上の何かがあるのは確かだ。


 なんだかこの配球をすると、後あじの悪さが残る。でも、克服してもらいたいという気持ちもあるし、秘密特訓とやらにちょっと期待した自分もいた。


 とにかく勝ちは勝ち。さあ、次だ。


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