高校3年の今・2
あの日、あの人に出会っていなければ、俺が野球をすることはなかったかもしれない。
母さんの悲しい顔を思い続けて、気持ちを押し殺し続けていたことだろう。
俺が、野球をやりたい、といった時、母さんがどんな思いだったかはわからない。じいちゃんやばあちゃんも。
俺が立ち去った後、3人で何か話をしただろうか。
じいちゃんは次の日、俺を誘い、グローブを買ってくれた。ばあちゃんも母ちゃんも、今までずっと応援してくれている。
いろんな思いはあっただろう。
無邪気なガキであった俺には、何もわからなかった。
「俺はまだまだガキだな」
今でも、いろんなことから目をそらし続けている。
ふと、あの人とキャッチボールをしながら、話がしたくなった。
でも、閉じられたシャッターの向こうに大きな体を見ることはできない。
別に死んじまったわけじゃないし、正月にだって会っている。でも、いつでもここにあった柔らかな顔が、今は見れないのが寂しい。それだけのことだ。
あっくん、亮君、なっちゃん。楽しそうにしている3人に無性に会いたい。
だけど、それはもう叶わない……いや、そんなことはない。
何を感傷的になってんだ。
きっと、野球部のせいだ。結局、大会にでることなく俺の高校野球は終わっちまうのか。
「くそっ!」
毎日のようにしているこのランニングも意味がない。
でも、結局走っている俺がいる。




