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花散らし
公園近くまでやって来ると、ひとつの建物が目に止まった。
あの時、君が見つめていた意味が分かったよ――俺達の大切な幼稚園だもんね。あそこは。
雨のせいで公園の入り口付近に人影はない。強い風の影響で閉まった露店がロープで固定されているのが見て取れる。昨日の賑わいはどこかに吹っ飛び、桜の花びらだけが舞っている。
会いたい人の姿も見当たらない。
公園の大時計に目を向ける。
けっこう寝てしまっていたのか……。
時計の短針は真上をまわっている。晴れていれば演奏も終わり、桜を見にお寺へと向かっていたはずの時刻。
体の力が抜けていく。小さな雨粒が体にぶつかり、髪からは雫が落ちてくる。吹き抜ける風が体も、心も寒くしている。
それでも僕は止まらない。
公園入口の車止めに自転車を立てかけて、中へと歩いていく。
舞い落ちた淡い色の花びらが、地面にたまった雨水で汚れていく。美しかった桜が次々と。
そして、桜が咲き誇っていたあの場所へ。
地面へと落ちていた視線が上がっていく。
僕は唇を噛み締めた。そうしなければ、嗚咽がもれてしまう。
こみ上げてくるものをぐっと飲み込み、風にも負けない声を上げる。
「美和ちゃん!」
舞い落ちる花びらに包まれながら、桜の木を見つめる背中がゆっくりと動いた。
髪も服も、顔もびしょ濡れの君。




