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僕らのガッカリ桜  作者: ゆらゆらゆらり
安田大地編
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29/58

花散らし

 公園近くまでやって来ると、ひとつの建物が目に止まった。


 あの時、君が見つめていた意味が分かったよ――俺達の大切な幼稚園だもんね。あそこは。




 雨のせいで公園の入り口付近に人影はない。強い風の影響で閉まった露店がロープで固定されているのが見て取れる。昨日の賑わいはどこかに吹っ飛び、桜の花びらだけが舞っている。

 会いたい人の姿も見当たらない。


 公園の大時計に目を向ける。


 けっこう寝てしまっていたのか……。


 時計の短針は真上をまわっている。晴れていれば演奏も終わり、桜を見にお寺へと向かっていたはずの時刻。


 体の力が抜けていく。小さな雨粒が体にぶつかり、髪からは雫が落ちてくる。吹き抜ける風が体も、心も寒くしている。


 それでも僕は止まらない。


 公園入口の車止めに自転車を立てかけて、中へと歩いていく。

 舞い落ちた淡い色の花びらが、地面にたまった雨水で汚れていく。美しかった桜が次々と。




 そして、桜が咲き誇っていたあの場所へ。

 地面へと落ちていた視線が上がっていく。




 僕は唇を噛み締めた。そうしなければ、嗚咽がもれてしまう。

 こみ上げてくるものをぐっと飲み込み、風にも負けない声を上げる。


「美和ちゃん!」


 舞い落ちる花びらに包まれながら、桜の木を見つめる背中がゆっくりと動いた。


 髪も服も、顔もびしょ濡れの君。


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