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僕らのガッカリ桜  作者: ゆらゆらゆらり
安田大地編
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28/58

ビワちゃん!

「――ちゃん!」


 大声をあげると同時に、意識も視界もはっきりしている。

 目の前にあるのは見慣れた白い天上。僕の部屋の。


 自然と言葉がもれる。「ビワちゃん……」


 幼稚園の中でいつも一緒にいて、何度も呼んでいたその〝呼び名〟。


「ビワちゃん……」


 飛び起き、階段を駆け下り、店を通り抜ける。

 いつの間に帰ってきたのか母ちゃんの声が、後ろから聞こえたが答えることなく走り去った。そして、店の横に置いてある自転車へと飛び乗った。


 小降りになったが、まだ雨は降り続いている。去りゆく低気圧を追いかけるように、強い風が吹いている。

 とにかく夢中でペダルを踏みこんだ。


 雨が頭を少し冷やしたのか、胸の中で冷静な自分がつぶやく。


 こんな天気だし、来ているわけがない。


 それでも足は止まらない。


 僕は君を知っている。ごめん、気付かなくて。

 小学生のあの時に記憶を沈め込ませていたせいで、それ以前の大事なものまで……。


 バカな自分への怒りをぶつけるように、強く強くペダル踏み込み続けた。


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