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ビワちゃん!
「――ちゃん!」
大声をあげると同時に、意識も視界もはっきりしている。
目の前にあるのは見慣れた白い天上。僕の部屋の。
自然と言葉がもれる。「ビワちゃん……」
幼稚園の中でいつも一緒にいて、何度も呼んでいたその〝呼び名〟。
「ビワちゃん……」
飛び起き、階段を駆け下り、店を通り抜ける。
いつの間に帰ってきたのか母ちゃんの声が、後ろから聞こえたが答えることなく走り去った。そして、店の横に置いてある自転車へと飛び乗った。
小降りになったが、まだ雨は降り続いている。去りゆく低気圧を追いかけるように、強い風が吹いている。
とにかく夢中でペダルを踏みこんだ。
雨が頭を少し冷やしたのか、胸の中で冷静な自分がつぶやく。
こんな天気だし、来ているわけがない。
それでも足は止まらない。
僕は君を知っている。ごめん、気付かなくて。
小学生のあの時に記憶を沈め込ませていたせいで、それ以前の大事なものまで……。
バカな自分への怒りをぶつけるように、強く強くペダル踏み込み続けた。




