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14.血の池


血の池…その名前を聞けば、どんな池なのか想像することは容易いだろう。


真っ赤に染まる池の周囲だけ異常に暑かった。

グツグツと沸騰する水面は、まるで池に込められた煮えたぎるような感情を表しているようだった。


池の上や周りにはたくさんの魂が漂い、自らの罪を嘆き、懺悔していた。


「…ここはアスチータの中で1番見るのが辛い場所だ。

いい気分はしないだろう。それが正常だ。

しかし彼らにとってこれは必要なことなのだ。

1番見るのが辛い場所だと言ったが、1番見なければならないところでもある。」


ジュネーロの言葉に対し、ショウは真剣な面持ちで頷いた。


「この中には僕たちが裁いた魂もたくさんいるんですよね…辛くて苦しい場所ですけど…見れて…よかったです…」


「ここは…私には…思いが強すぎ…ます…

後悔…悲しさ…悔しさ…苦しさ…全部…見え…る…」


リツが目をきつく閉じ、その場で倒れそうになった。

そんなリツをショウが支えた。


「リ、リツ?大丈夫ですか…?」


「確かリツは…」


「ええ、人の感情が見えるんです。いつもは見ないようにするために眼鏡をかけているんですけど…」


「ここは込められている感情が強すぎて、眼鏡をかけても見えてしまったんだな。場所を変えようか。」


「ま、待ってください…私も見なきゃいけないんです…いえ、私が見たい…んです…私たちが裁いた魂の…末路…を…」


リツはふらつきながらも、眼鏡を外した。

その目が微かに光り、様々な感情を読み取っていく。

ショウはそんなリツを支え、見守っていた。


「たしかに…ここは…辛い場所です…魂の苦しい懺悔が込められていま…すね…

だけど…悪い感情が…いっさい見当たり…ませんね…?」


ジュネーロが少し嬉しそうな顔をした。


「あぁ…アスチータに堕ちた者は、自らの行いを恥じ、悔いるのだ。その想いの中に決して悪感情は混じらない…それが血の池だ。」


「後悔や反省があれば…やり直すことができるんですよね…」


そう呟いたショウの表情はどこか儚げだった。


「あぁ…やり直すチャンスが与えられる場所がアスチータだ。」






「……1度深くなってしまった溝を埋めるにはどうすば…」





小さく呟いたショウの言葉は2人の耳には届かなかった。





「血の池がなぜ赤いかわかるか?」


ジュネーロが唐突に2人に問いかけた。


「血だから…じゃないんですね~?」


「理由があるんですか?」


「血の池の水は…アスチータへ堕ちた者が生前殺した者の血だということを言う者もいるが、それは違うんだ。

赤というのは生きていく上で必要な様々なものと結びついているのだ。

だから…アスチータへ堕ちた者が再び生きれるように、と血の池は赤く染められたのだ。」


ジュネーロの言葉を聞き、ショウとリツは煮えたぎる水面を再び見下ろした。


「再び…生きれるように…」


「それは……とても素敵ですね~?」




その言葉を噛みしめるように、ショウとリツは懺悔し続ける魂たちを見守った。




その日彼らが血の池の前から動くことはなかった。


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