異世界生活新しい「朝」
「これは...」
「子猫を飼う上で気をつける事、やってはいけない事、ミルクの与えた方、排泄の仕方、全てそこに詳しく書いてあるわ。体に異常が見られたらとりあえずその冊子を見て、それでも分からなかったり緊急の時はすぐに来て頂戴」
「なるほど、ありがとうございます」
家主は微笑み礼を言った。そして診察代治療代を払い終え、ソファに寝そべる幼女を再び横抱きにして持ち上げ、子猫を幼女のお腹の上に寝かせ、看護師と医者に会釈して病院を出た。
「お大事に」
「はい、どうもありがとうございました」
「...さて、帰りはどうするか」
病院を出ると、太陽はまだ来た時とさほど変わらない位置にいる。という事はまだ時間は8時ほど、今から歩いて帰れば10時ぐらいになってしまう。だからと言って、僕1人では魔力が足りないし行きの分だけでもかなり消費したから、ほとんど空っぽの状態だ。
「あんまり外にいるもの良くないだろうし、だからと言ってこのまま森を登るのは僕の腕が死ぬからなぁ...」
ゆさゆさと横抱きのまま少し揺さぶってるけど、マイヴィーナスが起きる気配はない。僕だって無理やり起こして、また魔力を貸して欲しいなんて言えない。
来た方向の森を横目見る、木で隠れているせいでここからじゃ家は見えないが、もう少し歩けば見える角度がある。
「けど、見えた所で何もないし...」
はぁ、とため息をつく家主。どうしようかと、5分ほどうろうろと彼方此方を行ったり来たりしていた。
「あら、どうかされたの?」
「え?あぁその、ちょっと帰れなくなってしまって...」
ぼーっと立っていると、いきなり後ろから杖をついたおばあさんに声を掛けられた。
「あらまぁ大変だわ。何処から来られたのかしら」
「ええと、あの森です...ね」
僕はすぐそこに見える森を指差す。
「あら、あの森に住んでらっしゃるのねぇ。という事はここから魔術で来たのかしら、まさか歩いて?」
「いえ、魔術ですが...僕の魔力で来た訳ではなくて。この子が半分以上魔力を出してくれまして...」
「あら、そんな小さな子が?だから疲れて眠ってしまってるのねぇ。宜しければもっとお話し聞かせてもらえないかしら?何かお力になれるかもしれないわ」
おばあさんが顔をしわくちゃにさせて微笑んだ。僕は頷きおばあさんに近くのベンチに座ってもらい、その隣に僕も座り更に隣に彼女も座らせた。そして僕の膝の上に子猫を乗せる。
「その子の魔力でここまで来たなんて、その子随分凄いのねぇ。ふふっ」
「ははっ、本当にーーーこの子は凄く優秀なんです。でも僕があまり魔術を使えないので基本の事ぐらいしか教えられなくて、今は僕の友達の魔術師に教えてもらっているんですよ」
「あら、そうなのね。その子は貴方の子ではないの?」
「あぁはい。話すと長くなるんですが、血は繋がっていません。出会った時からあまり僕には懐いてくれなくて...」
僕が微笑むとおばあさんも微笑み、まるで鏡のようで思わず笑ってしまう自分がいる。
「ふふっそうなのね。魔術師なら、将来は宮廷魔術師を目指すのかしら」
「ーーーそれは分かりません、僕はこの子が進みたい道を進んでくれればとしか思っていませんから」
「あら、ごめんなさい私ったら余計な事を...そうよね、好きな道を進むのが一番ね」
おばあさんは遠くを見て懐かしむように微笑む。
「はい」
「ふふっ、ステキな育て方をしてらっしゃるのねぇ」





