異世界生活始まりの「いつも通り」
「何言ってるの?家主さん」
ルナは不思議そうに首をかしげた、けど僕はルナ右腕を掴んだ。
「これルナのじゃないの?ねぇ」
「...っ」
ルナは慌てて僕の手を振り払った。僕が指差したのはルナの指、ネイル。
「ルナが気に入ってるネイルだよねそれ、僕はそういうのよく分からないけど、あの子の趣味じゃないと思うなぁ」
ネイルは発光色が使われ、リボンやハートなど派手に飾り付けられたネイル。あの子はどちらかというとおとなしめの花柄なんかを好む。
「ルナ、やるならもっと上手くやったほうがいいと思うな」
からかって僕が笑うと、ルナは眉をひそめてむっとして席を立った。
「ーーなぁんだ、つまんないの」
その言葉と同時に、姿はあの子のままで声だけがルナの声に戻った。
「ルナ」
「なぁに?お兄ちゃん」
ルナはふざけて微笑み、再び椅子に足組んで座った。
「早く元の姿に戻るんだ」
「えぇー面倒くさい、別にこのままでもいいじゃない?わりとスタイルいいし、あの子結構可愛いのよね。きっといい大人の女性になると思うなー」
ルナはひらひらとスカートをつまんでみせる。
「ダメだよ、魔術はそんな形で使うものじゃない」
「...はぁ、分かったぁ。じゃあお兄ちゃん後ろ向いてて?」
「はいはい」
別に裸を見るわけでもないのにルナは拘るらしい、僕は目をつぶってルナから顔を背けた。
「あと5秒待ってね、お兄ちゃん」
「分かったよ」
5秒、時計のカチカチと鳴る秒針の音を数える。
「はぁい、終わり」
そう言われて振り返るとやはりいつものルナがいた。黒いミニスカートのワンピースを見に纏ってロングの髪はヘアアクセサリーでアップにまとめられている。
「ねぇ、私の変装上手じゃなかった?ネイルはちょっとドジしちゃったけど」
「あの料理もルナが魔術で作ったんだろう?」
「あ、バレた?まぁ家事の魔法は得意だしね」
ルナは得意げに微笑む。
「どうしてこんな事を?」
「ちょっとだけ試したのよ、お兄ちゃんの事。あ、ちなみにこれはただの夢だから大丈夫、目が覚めたらいつも通りの朝」
「まぁ、いつも通りももうすぐ終わっちゃうけど。可哀想よねあの子」
ルナは可哀想なんて微塵も思っていないように、自分の髪を手鏡で整え始めた。
小悪魔のようなルナに僕は言いたい事を飲み込んで、説明を求めた。
「...ルナ、試したっていうのは?」





