異世界生活始まりの「お別れ」
「...家主さんまだ起きてるかな」
家主さんは手紙を読むとか言っていたから部屋にいるはず。もし起きてるなら、もう話してしまおうかな。
勿論自分が何をしたいかなんてまだ分からないし、宮廷魔術師の話だってまだほんの少ししかクロードさんに聞けてないから、想像も少ししかつかない。でも、家主さんに話すだけ話してみよう。
(...このままは、嫌だもん)
美味しいご飯を美味しく食べられるように、環境は自分で作らなきゃ。そして、どうせなら紅茶を淹れて持っていこうとキッチンへ向かった。
「よしよし。あ、クッキーも入れとこ」
小さめのお皿にバタークッキー数枚並べて、熱々の紅茶のカップをトレーに乗せた。
ゆっくり零してしまわないように階段を登る、そういえばこのお家に来たばっかりの頃に一度階段で足を滑らせた覚えがある。その時頭を軽く打っただけなのに、家主さんは何を思ったのか「僕の臓器を代わりに!」とかすごい騒いでたなぁ。
ふふっ、と思い出し笑いをした。
「ーーー家主さーんっ」
両手が塞がってドアをノック出来ないので、とりあえずドアの前で呼びかける。
「家主さん?」
ドアの向こうで何か声が聞こえるけど、小さい声だからあまり聞き取れない。
「あまりにもーーーそんなーー」
所々言葉が途切れて聞こえる、とにかく呼びかけ続けた。
「...家主さーん、家主さん?」
ピタリと声が止まった、静寂になる。そして数秒して扉が開いた。
「...ごめん」
出てきていきなり何の謝罪なのか分からず、幼女は家主を見つめた。何処も変わらない家主だが、目が悲しそうに笑っていた。
「家主さん?...ひゃっ!」
家主の手が幼女の背中に伸びた、思い切り抱きしめられた幼女はトレーをガシャン!と床に落としてしまう、カップか粉々になり熱い紅茶が床を伝っていく、幼女は慌てた。
だが、家主は構わずぎゅうっと力を込めて抱きしめた。
「ごめんね」
「何を...?どうしたんですか?家主...さん」
「もうーーーお別れの時間だ」
家主は幼女の目を真っ直ぐに見つめて、悲しそうに微笑んでそう伝えた。





