異世界生活始まりの「くろーどさん」
「服着替える?」
汗でびっしょりのパジャマを見て家主は言った、幼女はコクンと頷き力一杯体を起こす。
「ゆっくりでいいよ」
家主は背中に手を添えた。
「はい、これ着替え...あぁ手伝おうか?」
「っ、何いってるんですか!ひっ、ひとりでできますっ!」
「わっ...!分かった分かったっ」
もちろん善意で言った家主だったが、幼女は驚きのあまり枕を家主の顔面に投げつける、顔面に枕がヒットする。
幼女はむすっと頬を膨らませる。
「ーーー」
「ごめん、着替えたら呼んで。じゃあ」
家主は手を振り微笑むとガチャリとドアを開けて出ていった。
「はぁ...」
幼女は着替えをする為、パジャマのボタンを一つずつ開けていき家主が持ってきた濡れタオルで軽く体を拭く。そして上下お揃いのかわいいクマ柄のパジャマに袖を通した。
立ち上がり、今まで寝ていたベットを触ると気持ち悪いほど汗でぐっしょりと濡れていた。
「...あ、出来た?」
「はい」
「よしよし。じゃあ、こっちおいで」
幼女が扉を開けに行くと、家主が立っていた。家主は幼女の頭を撫でて幼女を部屋から連れ出す。
家主に手を貸してもらい階段を降りると、居間にオークのお母さんとお父さんがソファに座って肩を寄せ合い眠っていた。赤ちゃんはお母さんに抱かれて気持ちよさそうに眠っている。
「オークのお母さんが倒れてる君を見つけてベットまで運んでくれたんだよ。そのあと僕とクロードに知らせてくれてね」
「そうだったんですか...」
「あれ、そういえばクロードさんは?」
「クロードは宮廷から呼び出されて君が起きる少し前に帰ったよ。はいこれ手紙、というか謝罪文かな」
「...宮廷ですか?」
幼女は渡された手紙の封を開けながら、尋ねた。
「クロードもああ見えて宮廷魔術師の仕事が忙しいから。休日は店を経営してるけど」
「あ、そっか」
「今日は緊急の任務でどうしてもクロードも出向かなきゃいけなかったみたいで。クロードも君が目を覚ますまで、ここに居たそうにしてたけど」
「もうお外真っ暗なのに...」
もう夕陽の光などなく、もう夜の9時を回っていた。
「まぁ、深夜に起こされて任務に連れて行かれるよりはマシだ。ってクロードも言ってたし。とにかく君への謝罪の代わりにこの手紙を預けられたよ」
納得して頷き、手紙を開く。
『お嬢さんへ
体は大丈夫だろうか。君が倒れたと聞いて何事かと思ったが、まさかアレを食べてしまうとは思わなかった。お土産と言ってしまったが、あれは全て家主へ渡すつもりだった。あのクッキーの事を詳しく書くと長くなるが、体に害のある物は入っていない。それだけは安心してほしい。
夜8時48分、これから急な任務で俺はもう行かなくてはならない。だが、この様な粗末な手紙で謝罪の言葉を伝えるのは不甲斐ない。また後日そちらへ伺ってしっかりとした謝罪をーーーー』
「あ、家主さんっ!」
幼女が読んでいる途中、家主に手紙を取られる。
「長ったらしい手紙だなぁ、別に読まなくてもいいんだよ?」
3枚ほどの重なった手紙を見てつまらなさそうにそう言った家主だが、幼女はぴょんぴょん跳ねて手紙を取り返そうとする。
「うぅ、返してくださいっ」
「あぁごめん。でも今日はもう寝てほしいな。体もようやく調子が戻って来たんだし。僕もまだ晩御飯食べてないから、軽くご飯食べて寝ない?」
家主は幼女の前に膝をついてそう提案した。。
「...わかりました」
「ありがとう、じゃあ手紙は預かっておくよ」
家主は幼女をよしよしと撫でて立ち上がり、キッチンへ行き冷蔵庫から何かお皿を取り出してレンジに入れた。その間幼女はオークの赤ちゃんを愛でていた。





