異世界生活始まりの「もり」
幼女の過去の夢です、過去と言っても一ヶ月とちょっと前です。でも幼女にはこれほど記憶に焼きついている言葉と表情はないと思います。拾われた後の話も少しだけ続きます。
まだお日様が出ている、昼。そして周りは木や草がいっぱいで木で視界が塞がれてる、だから森。それだけ分かった、そして座り込む私に近づいてくる男の人。
「そこの君、僕と一緒に来るかい?」
私に話しかけてきた人がいた、一目見て変な人と思った。前髪がやたらと長くて目がハッキリ見えなくてぼさぼさ、服もシャツを着崩しててだらしない。
「...変な人には、ついて行きたくありません」
「まぁまぁそう言わないでよ、僕一人ぼっちなんだ。見た所君もそうじゃない?」
失礼な人だと思った。確かに私はもうその時から何も覚えていなくて、私の周りに人はいなかった。
「けっこうです、ひとりぼっちじゃ...ありません」
私は意地をはった。でも男の人はしつこく私と目を合わせて話しかけて来る、そんなにしゃがんだら服が汚れちゃう。
「君の服汚れてるね」
私は自分の格好を見る、気づいたら土の上に座り込んでたから着ていたストライプの青いワンピースは土に汚れて、糸がほつれてボロボロだった。
「この汚れ泥かな洗った方がいいよ、汚れが取れなくなる。糸もほつれちゃってるし...」
前髪の長い男の人はそういって悲しそうな顔をした。
「という訳で、僕と一緒に来ない?」
「いやです」
「うーん即答かぁ。考える余地を少しだけ作ってほしいかな」
男の人は苦笑いした、私はますます男の人を睨みつけた。
「ちゃんとした理由もないんだけど、僕は君を助けたいんだ。あ、ヒーローになりたいとかじゃないよ」
まぁなれもしないと思うけど。と男の人は、はにかんだ。
「つまり、君はたぶんこの世界で産まれたんじゃないよね、だから君を助けたい。同情っていうのかな、でもそれよりももっと衝動的なことな気もする」
「?」
男の人の言ってる事はよくわからないけど、何となくあんまり嫌な感じはしないような気がする。
「だって、目の前に小さな女の子がボロボロになってるんだよ?見過ごせる訳ないよ」
「それは、どうじょー、じゃないんですか?」
「うーん、どうだろう。同情っていうのは苦しんでる人とかを自分に置き換えて考えて、可哀想だからとかの理由で優しくしたり、行き過ぎたら相手を自分に依存させちゃうかもしれない事だよ。まぁ僕は、養えもしないのに人を拾うような事はしない、それは無責任だし人の為にならない」
「いぞん?むせきにん?」
「そう。だから同情のしすぎは君の為にならない」
私は首をかしげる、さっきから難しい言葉ばかりだけど、この人が興味本位で私を助けたいと言ってる訳じゃない気がする。
「だから僕は軽い気持ちで君を助けたい訳じゃない...んだけど、あぁこんなに理由がなくていいのかな、んー」
男の人ははにかんでいたと思ったら、急に悩み始めた、やっぱり変な人みたい。
「いや、やっぱり同情かもしれない」
「え?」
「だって服なんてこんなにボロボロだし、体だって小さくて手足なんて細すぎて折れそうだし、顔も少し擦り傷があるし、それにここは森の中だから夜になると真っ暗になるし危険だし...」
「ーーー」
「いや、でもそれだけで助けるのはやっぱりダメだな」
私はやっと諦めてくれるのかなと、ホッとした。
「ーーーよし、決めた。僕は君を拾う。理由は同情とその他諸々、僕自身もよくわからない衝動的な事!でも拾ったからには責任は持つ、朝昼夜三食昼寝と勉強付き、金はある。将来の事は縛らない。君がここで大人になるまで生きたいと願うなら、僕は君がちゃんと大人になれるように手伝いをしたい」
「これは、約束より契約みたいなものかな。ちなみに大人になったら君はこの森を出るなり好きにしたらいいよ。どう?いい条件だと思わないかい?」
「...ど、どうして、そこまでするんですか?」
分からなかった。私は自分のことも何もわからない、この男の人の事も知らない。それなのに『どうじょう』の域を超えてる気がする。
それに、大人になった私を自由にしたらこの男の人にはなんの得もない気がする。
「それに、あなたに得がないです...」
「僕に徳?あぁ言われてみれば、それもそうかもね。でもいいよ、ははっ」
何事もなかったかの様にまた男の人は笑う、暖かいお日様が男の人を照らした。
「いいんですか?...」
「うん、いいよ。だって君が大人になる頃にはきっと僕はいないだろうから、僕が居なくなったら全部無かったことにしようか。あぁこれだけ約束、この約束は君の為だよ」
「?わかり、ました」
私はよく分からなかったがコクンと頷いた、男の人に頭を撫でられる。
「うんうん、それで?どうする?」
もう答えが分かりきっているように自信満々に笑う男の人に、私はーーーーーー
「...大人に、なりたいです」
「...いい返事だね、そうと決まったら行こうか」
「どこにですか?」
「そりゃあ勿論、僕の...いやこれからは二人の家、かな」
自分が誰かも分からない、でもずっと冷たい土の上にに一人でここにいるのはやっぱりいや。だから変な人についていく。





