異世界生活始まりの「鐘」
「ごちそうさまでした」
ご飯ときのこのスープ、あとは卵焼きとソーセージとか。
少し膨らんだ胃の部分をさすった。お片づけしなきゃ、とお皿を重ねて台所へ運んだ。皿洗いは危ないからと家主さんはあまりやらせてくれない。ただでさえ外に迂闊に出れないのに、これ以上何かしたらもう何もさせてもらえない気がする。
コンコン
「ん?」
誰か来たのかな、お皿はお水につけとこう。
ぽちゃん、とお皿を水につけて汚れが浮きやすいようにした、そして玄関まで小走り。
「はーいっ、どちらさま...あ」
「久しぶりお嬢さん」
「クーロドさんっ!」
私がぴょこぴょこ跳ねていると、クロードさんは頭を撫でてくれた。クロードさんはワイシャツに黒ズボンと黒いジャケットを羽織っていてポンコツ家主さんとは違う、色気みたいなのを放ってる。
「入っていいだろうか、あぁアイツは?」
「どうぞ、お茶出します!家主さんは今は用事で...」
「そうか、いや昨日着信が入ってたからどうしたのかと思ってな。あの時忙しくて電話出れなくてな、ここで飢え死にでもしてなきゃいいんだがと思って...」
「家主さんは、飢え死なんてしてないですよっ」
クロードさんは真面目な顔だけど、私は誤魔化して笑った。昨日の事を話したら私は絶対にクロードさんに怒られる気がする、あんまり話したくないなぁ。
「あーう、あーうっ!」
「ん?なんだ、赤ん坊の声が...」
「あ、赤ん坊なんていませんいませんっ」
否定したものの、階段からオークのお母さんが降りてくるような足音が聞こえる。
「あのすみません、おトレイを貸して頂きたいのですが」
説明する間も無く、お母さんと抱えられた赤ちゃんが居間に降りて来てしまった。
「ーーー」
ダメだ、クロードさんが口をあんぐりと開けたままフリーズしてる、そしてオークのお母さんも俯いてしまった。
「これはっ、誤解です!」
私が弁解しようとした時、玄関から声が聞こえてガチャッと音がした。
「ただいまー」
家主さんの明るい声でクロードさんが我を取り戻した。
「あれ、クロード来てたのか。なんだ、一言電話くれればいいのにさ」
「いやお前......え?」
家主のさんの後ろにいるのは紛れもなくお父さんオーク。オークさんと目と目があったクロードさんは再びフリーズしてしまった。お父さんは何食わぬ顔で赤ちゃんとお母さんの方へ駆け寄った。
オークのお父さんがちょっと歩いただけで、床の振動が凄い。
「ただいまーよしよし。いい子にできたんだね」
「家主さんっ!私のことより、あのっ」
家主さんはクロードさんを無視して、私にすり寄って来た。
「ん?どうかしたの?」
「クロードさんがフリーズしてます!」
「ん?あれ、おいクロード。何してるんだ君」
「...いや、お前こそなんであんな...というか、昨日の電話の事なんだが」
「あぁあれは何でもないよ、ちょっと急ぎの用があったんだけど片付いたから気にしないで」
それだけ言うと家主さんはまた私の頭を撫でる。
「あぁそうか...って誰だよあいつら!」
クロードさんは額に汗を浮かべてオークさん達を指差した。
「あいつら呼ばわりは失礼だろ、クロード」
「それは、そうだか...いや、でもまさかガッ...お嬢さんの次はオークと一緒に暮らしてるとか言う気か?!」
クロードさんが声を荒げた。





