異世界生活始まりの「いつかの日」
「あの、どうかされましたか?」
お母さんに話しかけられたが、なんでもないです。と私は首を振った。
「朝ごはん食べるので、よかったら好きなところでくつろいでてください」
「ありがとうございます!ではお言葉に甘えて」
「あーうっ」
「コラ、あまり物に触らないのっ」
赤ちゃんがオムツをつけてカーペットに四つん這いになり、壺や本類を触っている。私はそれを微笑ましく見つつ、冷蔵庫からご飯を取り出した。
「そっか、昨日何も食べずに寝ちゃったんだ..」
家主さんが一人で食事をとっている所を思い浮かべると、何だか申し訳なくなった。家主さんは寂しがりなのと色んな人とか動物に世話焼きだから。
「あ、でも...」
レンジでご飯を温める。
「そんなに助けてはくれないかなぁ」
呪文の読めない文字があったら教えてくれるし、足を怪我して泣きじゃくってた時は助けてくれたけど。でも私が、出来そうで出来ない事には手は貸してくれない。呪文を何度も同じ所で噛んじゃったりとか、言えるようになるまで待っててくれる。雑草抜きで固くて抜けない雑草があったら抜けるまで頑張れ、って言ってくれる。
いつも、何か出来ても出来なくても頑張ったことを褒めてくれる、どんな小さな事でもそう。
「...どうして」
森で拾われたあの時からずっと感じていた。どうして私を拾ってくれたんだろう、こんなに良くしてくれるんだろう。
記憶がない同士だから優しくしてくれてるのかな、でももしそうなら家主さんの記憶が戻れば、私はここにはいられない。
「ピーーー」
レンジの音がなった、ほかほかにあたたまったご飯のお皿を取り出す。
もし、片方の記憶が戻るならそれはきっと家主さんの方だと思う。そしてそこで"同士"お終いなのだと心の中でそう繰り返してる、だから今まで、あんまり親しまないように、馴染みすぎないようにして来たのに。
「いつか、お別れが来たら」
どうなっちゃうのかな、いつからから怖くなってしまってた。家主さんの記憶が戻るのはいいこと、元々今の家主さんは本当はいないはずの人なんだから。
「......いただきます」
いつのまにかお母さんと赤ちゃんは二階へ上がっていて、私一人遅めの昼食を食べた。





