異世界生活始まりの「ひかり」
幼女は家主のことを完全にバカにしてます。
「ふわあぁぁぁ、あ?」
「あーうっ」
「ふぇ?」
私が寝返りを打つと暖かいむにむにとした手に鼻を掴まれた。
「あう、うーっ」
ぼんやりと霞みがかった視界から見えたのは、緑色のオークの赤ちゃんだった。
「ん、よしよし」
私は四つん這いで乗りかかって来た赤ちゃんの頭を撫でる、赤ちゃんは嬉しそうにまた鼻をつまんできた。
「よいしょ、と」
鼻を摘まれたまま、赤ちゃんを抱っこして体を起こす。
「あうー」
「おはよーう赤ちゃん。お母さんは?」
辺りを見てもお母さんもお父さんも見当たらない、ついでに家主さんもいない。そういえば何の物音もしないし一階にはいなさそう、2階かな。
「家主さーん、お母さんお父さーん?」
「あうーっ」
2階の階段手前で声をかけた。少し待つと2階からドタバタと誰か降りてくる足音が聞こえてきた。
「あっ!起きてらっしゃったんですね。おはようございます、お世話になりました」
階段を降りて、上下青のストライプのサイズもピッタリのルームウェアを着て、深く深く頭を下げてきたのはオークのお母さんだった。
「あ、おはようございます。あの家主さんとお父さんは...」
「同居人の方は夫と一緒に洞窟の方に行きました」
「へぇ、ってどっ洞窟?!また同じ事があるかもしれないのにどうしてですかっ?いくら家主さんが一緒でもっ家主さんはポンコツなんです!」
ビックリした私はどうしてか理由を聞いた。お母さんはよいしょ、と私の手から赤ちゃんを受け取った。
「あーうっ」
「いえ、違うのです!同居人の方には荷物を取りに行くのを手伝って頂いてるだけで」
「へっ?荷物ですか?」
「もうあの洞窟に住むのは危険だと思いまして、だからと言っていつまでも此処にお世話になるのは申し訳ありませんので、近々何処か別の場所に引っ越そうかと...今朝夫と相談しました」
お母さんは苦笑いでそう答えた。
「......そうですか」
「はい。怪我が酷かったので私は止めたのですが、夫がどうしてもと。同居人の方が付き添ってくださると仰るので...」
なるほど。あぁ、でも良かった、荷物を取りに行っただけなら安心かな。ホッとした途端また眠気が襲ってきた、そういえば今は何時だっけと時計を見る。
「12時」
お昼の。
「あ、その、お昼ご飯は冷蔵庫に入っているからと同居人の方が...あとこれを預かっております」
「え、あ、ありがとうございます」
唖然とした私に一枚の紙が差し出される、そこには家主さんの無駄に丁寧な字でこう書かれていた。
『今回の件を機に、今日から1週間無駄な外出は控えること、出来る限り家にいること、家の手伝いをすること。僕はちょっと出るからいい子にしてるんだよ』
最後に大きなハートマーク付きで書かれていた。
「...うぇ」
今日からって事は、今日が水曜だから土日挟んで来週の火曜日までかぁ。あからさまな嫌な顔をした私を見て、オークのお母さんが戸惑っていた。





