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異世界で記憶のない毒舌幼女とポンコツ魔術師。  作者: くるすみ。
追憶の書。
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異世界生活始まりの「いばしょ」


「いいかい?もう一度言うよ、リピートアフターミー?」

「はぁい...」


幼女は絶賛お説教中。


「無茶は出来る限りしない」

「無茶は出来るかぎりしない」


「今度こそ魔術を使う時は僕を呼んで」

「こんどこそ魔術を使う時は僕をよんで」


「勝手に家を出ない」

「勝手にお家を出ない」


はぁ、とため息をついて満足した家主。



「よしよし、じゃあ晩ご飯にしようか」

「え、でももうこんな時間...」


今の時計はもう9時を回っていた。


「今日はちょっと、いやかなり遅いディナーだよ」


家主は苦笑いをしてキッチンへ向かった。よく見たらいつも食事をとるテーブルに、今日は白のテーブルクロスと薔薇の花が一輪花瓶に活けられていた。


「あ、そうだ。ルナの事だけど」

家主はキッチンでとんとんと包丁を使いながら語りかけた。


「...なんですか?」

「その僕が言うのもなんだけど、ごめんね。ルナに何か言われたりされたりしたんだろう」


「べつに、なんでもないですよ」


「ごめんね、ルナは昔からああいう性格らしいんだ。僕も叱ってはいるんだけど、本当にごめん」


「......」

「もし君が傷ついたならもう会わせないし、ここでルナの話もしないよ。ルナも厳しく叱っておくから」


別にそんな事をしてほしいわけじゃない、と幼女は心の中で密かに思ってた。


「いいです、きにしてないです。それにルナさんが好きじゃないからって、家主さんに叱っていうのは違うと思うし」


ポツリと呟いた幼女だったが、家主の耳にはしっかりと届いていた。


「あんまりいい人じゃないかな、って思ったけど...家主さんの事大好きみたいだから、怒らないであげてください」


幼女はそう言うと恥ずかしそうに耳を赤くして、食器の用意を始めた。そしてそんな幼女を思わず家主はしゃがんで抱きしめた。


「きゃっ、何するんですか、家主さんっ」


「いや可愛いなって思って」

「こ、っこのロリコンへんたいっ!」


家主は幼女の肩に顔を埋める、幼女は必死に引きはがそうとした。


「ん、もうちょっと」

「...お腹がすいて死にそうです」

すがりついてくる家主に、幼女がわざと呟いた。


「はっ、今すぐ、ご飯作るからね!」


家主は慌てて立ち上がり、再び包丁を手にしてとてつもなく早く野菜をみじん切りにし始めた。幼女はその隙にささっとキッチンから離れる。



「ふぅ、きもちいいーーー」


夏に向かっている途中の、まだ過ごしやすい日の夜の風はとても気持ちいい。窓から身を乗り出して辺りを見る。


真っ暗な森なので何か見える訳でもないが、灯りが少ないおかげで星だけは、いつ見てもどこにでも煌めき散らばっている。


「ふわあぁぁ、うー」

大きな欠伸が眠気を連れてくる。昨日一回魔術を使っただけで、あんなに眠かった事を思い出した幼女は、明日は一日中寝てるのかなと思いをめぐらせた。




静かな中にトントンと一定のリズムの心地よい包丁の音と、風と夏の匂いと、それだけで心は満たされていった。


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