異世界生活始まりの「お叱り」
「ねぇ、君はべつに悪い事した訳じゃないだろう?僕は今すごく君を褒めたいんだけどなぁ」
よしよしと顔を逸らした幼女の頭をなでる。
「それにね、君が宮廷魔術師って言ったけどたぶんその連中、本物じゃないと思うんだよね」
「え?」
「これ知ってる?1週間前から続いてるこの事件」
家主さんは、ビリビリちぎり取った跡がある記事を見せてくれた。そこにはモノクロの大きな写真と細かい文字が並んでいた。
「この記事、ほらここに宮廷魔術師の服を着てる人が写ってるの分かる?」
「はい......」
モノクロの写真は少し見づらいが、確かに幼女が見た服と同じ宮廷魔術師の服を着て顔を隠した男が写っていた。
「1週間前からずーっと、宮廷魔術師の服を着て偽って勝手に魔物を始末してる事件があるんだ」
まぁたぶん、何の功績もないただの野蛮な輩か盗賊団だと思うよ。と家主は言った。
「それにほら宮廷魔術師の服ってさ胸の辺りに王家の紋章があるはずなんだけど、それがないでしょ」
「ほ、ほんとだ.....」
記事を見て幼女は目を見開いた。
「それに、あまりにも被害が酷いから懸賞金も出てるんだよ。何なら懲らしめてとっ捕まえて来ても良かったし?」
「む、むりです!」
「冗談冗談、ははっ」
少しずつ幼女の心が軽くなっていった。
「...それに君は、オークを助けられて良かったって思ったんだろう?」
コクンと頷く幼女。
「お母さんのオークからお礼を言われてどう思った?」
「うれしかった、です」
助けられて良かった事と、皆無事で良かった事と、無茶な計画だった気もしたけど、それでもありがとうと言われて嬉しかった。助けて良かったと心から幼女は思っていた。
「じゃあそれでいいんだよ、もし人に何か言われても、その気持ちを歪めず忘れずに大切にするといい。これから先も」
「それと、これからもし誰かを助けたくてどうしてもこの手しかないと思う事があったら、迷わないで。誰でもない自分を信じて進めばいい。後で後悔してもいいよ、ただ未来より今やるべき事を見失わないように」
「君にはそんな風に生きてほしい、僕のエゴだ」
家主は幼女の目をまっすぐに見つめた、ゆっくり頷く幼女。
「よしよし、まぁでもちゃんとダメな事は怒らないとね」
「?」
すっかり涙の止まった幼女を前に、家主はまたにっこり笑顔でそう言った。
「...勝手にまた魔術を使った上に今度は2回、しかも間髪入れずに2回も!その小さな体にどれだけ負担をかければ気が済むんだ!勝手に家を出て言って僕がどれだけ心配して探した思って、どれだけ探しても見つからないから、もう魔術を使うしかないと思って、でも僕はそういう系統の魔術は全然ダメだから、わざわざクロードに電話して、そしたら君が泥だらけで帰ってきて...」
「か、間髪はいれましたっ!オークさん探してる時とかっ」
「1分、2分なんて入れてないのと変わりないよ!」
「ひぇ...」
怒涛の勢いで怒る家主に、思わず幼女は尻餅をついた。





