異世界生活基本の「思わず」
私は思い切り手首を掴む手を振り払った。
「何するんだこのガキっ、静かにしてろ」
「どうして、どうしてオークさん何もしてないのに...っ」
「出来事の有無なんて関係ない、魔物は危険な存在だ。残らず始末する」
「いっ!」
今度は両手を後ろに回され掴まれた。ギリギリ締め付けられる腕の痛みに耐えつつ、魔術師の人を睨みつけた。汗が滴り落ちる、もはや暑いのか寒いのか分からないほどだった。
周りには街頭一つないせいで相手の顔もオークさんの顔もよく見えないが、きっともう戦ってる。武器が擦れ合う音と、声と唸り声と叫び声と、全てが静かな森に響いていた。
ガチャガチャと繰り返される音、たまに地面が光から光が見えるのはきっと魔術のせい。
「っ、どうしてっ!オークさんが何もしてないなら別にあんな事しなくたって...!」
「頭の悪いガキだな、言っただろうが。出来事の有無に関わらず全ての魔物は始末する」
「...」
「だからどうして?と言いたそうな顔だな。理由ぐらいは人間なら知ってるだろう。そしてオークは魔物、始末する以外にどうする?」
理由?
「...オークさんは魔物じゃないです」
「はっ、じゃあなんだ?オークを人間とでも呼ぶか?」
魔術師の人は嘲笑った。
「っ、そういう事じゃなくてっ!」
「オークさんは魔物の中の一人じゃないんです、ちゃんとオークっていうちゃんとした......」
声をずっと出しているせいで、走ったわけでもないのに息が荒くなってきた。
「馬鹿か貴様、オークが魔物じゃない?ふざけるな。オークという種族こそ魔物らの中でも恐るべき存在だぞ。あんな汚らわしい獣、本性を見れば貴様も怖がる」
魔術師はしつこくそう魔物と呼ぶ、頭が痛い。ズキズキと鈍く痛む、遠くか近くか戦いの音がする。でもさっきよりオークさんが持っていた鉄のような武器の音が聞こえなくなったような気がする。
「ふん、見てみろ。もうすぐだ」
魔術師がまた嘲笑った。暗闇の向こう、もう血みどろになっているのかもしれない。それを黙って見ていられる訳がない、でも手は離してもらえない。
こみ上げる涙に耐えられず涙目になり、思わず呟いてしまった。
「赤ちゃんがいるのにっ、こんな...」
「赤ん坊だと?」
(......あ、しまった)





