異世界生活基本の「にげて」
「どうにか...?」
「あぁどうにかする、時間は稼ぐ。だから君だけでも逃げなさい」
その言葉は今一番信用できない、どうしてどうにか出来ない事をそんな風に...。それと、宮廷魔術師って前の家主さんの職業だっけ。もしかしたら家主さんもこんな事をやってたのかな。
...ドクドク、心臓の音が体で感じられた。事実でもない創り上げられた嫌な妄想が頭の中を染めていく。
「違う!」
隣にオークさんがいるにも関わらず、洞窟内に轟く声を上げてしまった。
(でも、もし昔の話だとしても、前の家主さんの話だとしてもまさか家主さんは...)
「ふん、オークのような卑しい種族が情報誌を作るなど」
「オークは野蛮だ。街の皆に被害を加えるからな、早めの始末をとのご命令だ」
混乱し始めた時、宮廷魔術師の人たちがニヤニヤしながらこちらへ話しかけてきた。私は見つけてしまった疑問に体が硬直していたが、オークのお父さんが、私を逃がそうと前に立った。
(とにかく考えるのはやめよう。家主さんに直接聞けばいい、覚えてないとしても)
私はそう心に決めて、オークさんの後ろ姿を見た。きっと私が立ち向かってもあの人達には勝てないし、勝ち目もない。だから逃げるしかない、でもオークさんは?お母さんと赤ちゃんは?あの部屋に入ってるからとはいえ、きっと見つかれば逃げ道はない。
(...始末って、そういう事なのかな)
宮廷魔術師と呼ばれる人達は白い生地に黄金のラインが入った長いマントのようなローブのような物を着て足元は完全に隠れている。そしていかにも魔術師というような、高貴な雰囲気を身に纏っている。
「おい、聞いているのか?貴様を始末しろとのご命令だ、つまり貴様は今から死ぬ。どうせ後ろに家族でも隠してるんだろう?」
「っ...!」
「安心しろ。後で一緒の墓に埋めてやるさ」
でも、オークさんはきっと街の人に被害を与えたりするような魔物じゃない、魔物じゃないのに、宮廷魔術師の人達は何を基準に始末しているんだろう。
「...ん?なんだそこのガキ、てめぇもオークの仲間か?」
「違う、この子は!たまたまここに迷いこんだんだ。僕をやる前にこの子だけでも外へ出してやってくれ」
オークのお父さんは宮廷魔術師に向かってそう言った、私は慌てて否定しようとしたのに、「いいからこのまま逃げなさい」とオークのお父さんに目でそう言われたような気がした。
「あ、ひゃっ!」
「このガキは送っていってやる」
宮廷魔術師の一人に手をぐんっと引っ張られ、外へ出されてしまった。強い男の人の力に抵抗もできず、腕を掴まれたまま。
「いっ、いやっ、やめてください!」
「おい騒ぐなガキ!いいか、今日見た事は全て忘れて家でねんねしてな」





