異世界生活基本の「ふたりのいえ」
「でも今は、そんなこと言ってる場合じゃないから...ごめんなさい」
(そういえば、私ぐらいの子が1人で魔術を使って魔力が暴走して身体中を荒らしてその子は死んじゃったとか、ニュースであったっけ)
少しの後ろめたさと怖さを掻き消して、首をブンブンと横に振った。家主さんが言っていた呪文を思い出す。確か行きたい場所を言って、それから呪文を唱える、だったはず。
ペンダントを地面に置き、ランプで照らす。
「ランドロード」
その一言でペンダントが青く光り始めた。地面が瞬時に光りを放ち始める、そのペンダントはまるで生きているように、青くドクドクと光り巡らせている。
そして呪文を続けて唱える、曖昧だが覚えている所はハッキリと発音した。
「...きれい」
ぽつりと呟き、すっと目を閉じた。何故か何も不安はなかった、失敗するかもとか死ぬかもとか魔力が無くなるかもとか、何も感じる事はなくただ魔力の流れに身を任せた。
「あれ、ここ...あっ!」
しばらくして目を開ける、そして慌ててランプとペンダントを持ち直して立ち上がった。
「家主さんっ!」
目の前に家主がいた、倒れている。ランプで家主さんを照らすとコートは葉っぱと土で汚れていた。顔も手も土まみれだ。
「家主さんってばっ!!」
服が汚れる事も気にせずその場に座り込んで、必死に家主をこれでもかと揺する。死んでないか確かめる為に、心臓の部分に手を当てた。
「う...うぅ......やぬじざんってばぁ...っ!」
確かめる為に落ち着こうとすればするほど、込み上げてくる物に耐えきれなかった。幼女は鼻水で声が酷い、でもとにかく生死を確かめる為に心臓に手を当て続けた。
確かめてる間も家主は動かない、一ミリも動かない。夜の冷たい風が家主を冷やしてしまっている気がして小さな体で家主をぎゅっと抱きしめる。
「いっ、きてる!」
動いている心臓に幼女は自分でも信じられないほど安心した、ぎゅうぎゅうと痛かった心臓が元に戻った。格好はボロボロだけど動く心臓にこんなにも喜びを感じた事があっただろうか。
「家主さん、寝てるんですか?」
「......」
「まぎらわしいんですよ、本当に...もう、ポンコツですね」
よかった、と心の中でひたすらに繰り返す。幼女は涙と鼻水をすする、すすっても止まらないけど。
「家主さん帰りましょうよ」
ペンダントを握りしめた、きっとここに来る事が成功したから魔力は幼女の中にあるのだろう。帰りも同じようにそれを使えばいいだけ、家主には怒られる事を承知で、
「怒られるだけじゃ済まないかもですね、ごめんなさい」
家主のサラサラの髪を撫でる、幼女は座ったまま家主の頭を自分の膝に乗せた。
ペンダントを落ち葉の上に置いて同じように呪文を唱える、そしてそのまままるで母が赤子を全身で抱くように、幼女は家主の頭を抱き抱えた。





