異世界生活基本の「迷いはなく」
「え...あ、お花」
幼女の足元が先ほどから痛痒かったのは花が咲いていたからだ。夜に咲く白い花、街ではほとんど見かける事はないが2人の住む家の森にはよく咲いている。沢山咲いているような花ではないので、すぐに分かった。
「ね、大丈夫、だから少なくともこの森に僕らの家があるはずなんだけど。うーん、明かりが全く見えないなぁ」
家主の家の近くには街灯が3個ほどポツンと設置されており、夜になると自動的に付くようになっているがそれさえ見えない。
幼女は家主の手をぎゅっと握り直し、身を寄せる。家主は少し考えて、幼女の黒い宝石のような目を見つめた。
「よし、たぶんこの宝石にもあまり魔力が残ってない。君だけでもどうか逃げて」
そう言うと幼女に暖かく大きな手でぎゅっとペンダントを握らせ、幼女の返事を聞く事もなく再び呪文を唱え始めた。
「ま、待ってくださいっ!家主さんはどうするんですか?!ポンコツの変態がこんな所にいても餌になっちゃいますよ!!」
「マイヴィーナスはどんな時でも毒舌だね、ははっ」
家主は弱々しく笑った、幼女はふざけて言った訳ではない本音だった。でもそれは伝わらず次に目を塞がれた。
「大丈夫、僕はどうにかする」
どうにか出来ない、そんな予感がした。あの魔物はただの魔物ではないスライムではない。意識を手放したくないのに視界が暗く染まる、幼女は必死に家主の手を手繰り寄せた。
「いや、待ってっ!!待ってくだ...さ」
そしてそのままゆっくりと意識を手放した。





