異世界生活基本の「それぞれ」
「僕が記憶を無くした時すごく心配してくれて解決の為に魔法の勉強を徹夜してまでしてくれたんだけど...」
幼女はこくこくと頷く。
「記憶を無くして一週間後、妹含めた家族に病院で会った時、中身がダメ人間に変わり果てた僕は妹に言われたんだ「お兄ちゃん、私が絶対記憶を戻すから!大丈夫だよ」って笑って」
「...嬉しくなかったんですか?」
「嬉しかったよ。宮廷魔術師の頃の僕の事すごく尊敬しててくれてたみたいで、いつかお兄ちゃんみたいになりたいって言ってくれてたみたいだから」
「妹の...ルナの気持ちもよく分かってた、一週間前まで宮廷魔術師のクールで完璧人間で尊敬されてた僕が、初級魔術も使えないポンコツになったんだから。オマケにこのダラけた性格」
「...それは同感です」
幼女は強く頷いた、横でクロードが声を殺して笑っている。家主は家事は好きらしいがとにかく雑で面倒くさがりだ。
「きっとルナは誰よりも僕の記憶を戻す事に力を注いでくれた。でも、僕はあんまり分かってなかったんだ、元に戻るって何を、僕は僕ではないのか。って...新しい自我が芽生えちゃってね」
「あ、だからですか?」
幼女は察して家主に聞く。
「そう、自我の芽生えた僕はもう僕になってた。だから苦手な物とか好きな事とか食べ物の好みとか、新しい今の僕が形成された。で、記憶を戻す事が怖くなって、拒んだんだ」
「...それでけんかですか?」
「うん、すごく怒ってたなぁ...確かあの時はまだ12歳だっけ」
そういうとため息をついた家主は、夕陽に染まる空を見つめていた。





