異世界生活基本の「君の事」
「よう、久しぶり」
遅かったな、と洒落た椅子に座った途端嫌味らしくそう言われる。
「これでも5分前についんたんだけどね」
「10分前行動が厳守だ」
「そうかい」
あぁ、とそれだけ返すとウェイターが水を持ってくる。
「どうぞ、こちらメニューで御座います」
「昼は?」
「まだだよ、さっきまであの子と一緒に屋台を見てたから」
「あぁ、あの拾ったっていうガキか。じゃあまずは腹ごしらえだな」
相席のそいつはそれだけいうと、メニューから適当に注文を始める。僕の分も注文してくれるのは嬉しいけど、ちゃんと食べきれるだろうか。
そして僕はシルクハット脱いで喉を潤す為、水を飲んだ。
「それで、用はなんだ?」
賑やかなカフェの為かなりガヤガヤと混雑した中、相席のそいつは淡々と話を始めた。
「ほら、この前頼んだやつ」
「あぁ」
そいつはさっとスーツの内ポケットから書類を一枚取り出した。
「ありがとう」
僕はそういって書類に目を通す、結果だけをじっくりと見て書類から目を離した。
「やはり素質はあるな、それもかなりの量だ。勉強も訓練さえすれば、あっという間に今のお前は越すぞ」
「やっぱりかぁ」
「なに笑ってるんだ、元はと言えばお前が記憶を...」
「分かってるよ、記憶をなくして魔力も高度な呪文も唱え方も忘れたんだ、今まで僕が積み重ねきた事すら忘れた」
「よく分かってるじゃないか」
「まぁでも、悔しくもないんだけどね」
「で、だ。俺にこれを調べさせてどうするつもりだったんだ」
そいつは書類を摘んでヒラヒラと風になびかせる。
「それはこれから考えるよ、彼女には彼女のやりたい事をさせてあげたい」
彼女とは僕にとって大切な子、一ヶ月前の出会いは忘れもしない。
「勿体ないな、こんなに質がいいなら立派な宮廷魔術師になれるぞ。もしくはそれ以上にも...」
そいつは書類のグラフを見ながら言いかけたが、いやそれはないか。と口を閉じた。
「いいんだよ、何も魔術師が全てじゃない」
「それもそうだが」
「だが、お前の所に置くには勿体無いほどだ」
「失礼だなぁ」
「俺は前のお前の事は大いに尊敬しているし、敬愛してるが、今のポンコツのお前は尊敬する要素も敬愛する要素もない」
「それは、まぁ言い訳はしないけど」
僕は相変わらずの友人の態度に目を細めた。





