異世界生活基本の「隠し事」
「でも自分でも不思議なほど冷静というかね。記憶を無くしてからまず知り合いに言われたのは驚くほど人が変わった、って言われたんだよ」
「家主さんはもとからロリコンなんじゃ...」
「まさか!それはマイヴィーナスにだけだよ?」
「あ、それはそれでいらないです」
迷惑そうな幼女の頭を家主はひたすら撫でる。
「それはそうと前までは...」
「?」
「いや、言わない方がいいかな」
家主はぼそっとつぶやくと椅子から腰を上げた。優しい手つきで頭を撫でられて幼女にふと猛烈な眠気が襲ってきた。
「う......」
「もう夜も遅い、眠ろうか」
そういうと幼女を横抱きにしてベットにそっと寝かせる。
「あのひとつだけ...」
「ん?」
「家主さん、記憶ほんとうにないんですか?」
「うん、ないよ。僕は僕であって僕じゃないから」
「?わかんないです...けど。でもいまの家主さんはいまの家主さんだから、えっと私、いまの家主さんじゃない家主さんもしりたい...です」
微睡みの中で幼女はそういうと、すっと眠りに落ちていってしまう。
「...ありがとう、そう言ってくれたのは君が初めてだよ」
家主は微笑んだ、初めて人に言われたその言葉に胸がくすぐられるように。
「記憶のない僕はただの器で、空っぽで、何もできない」
誰よりも自分が一番知っていた。言われなくても、分かっていた。だから、初めてだった。
「いい夢を」
家主は、幼女のおでこにそっとキスを落とした。





