異世界生活基本の「宮廷魔術師」
家主は元は超偉い魔術師だったららしい、です。でも記憶を無くした今の家主はポンコツです。
「その魔法が、えっと、記憶をなくす魔法ですか?」
「そう正解、相手も宮廷魔術師だからかなりの腕があったんだろうから、何も出来なかった。記憶喪失の魔法なんて専門外だったみたいだから、されるがままってね」
大きな事なのに、ははっと声を上げて家主は笑った。
「けんかしたんですか?えと、友達と...」
「友達っていうかライバルみたいな感じだったみたいだけど、何か僕に恨みでもあったのかなー」
うーんと、思い出せもしないのに考え込む家主に幼女は声を詰まらせた。
「あのさっきからしてる、話って...」
「あぁ、記憶をなくす前の話はね、いろんな人から教えてもらったんだよ。宮廷に何人か知り合いがいて、何も覚えてない僕に色々教えてくれたよ」
宮廷魔術師の見習いとうだけで、栄光だというのにそれさえも今まで事も自分の事さえも全て忘れてしまったのに、どうしてこの人は笑っているのだろう。
悲しいとか、辛いとか、悔しいとか、怒ってるとか、センチメンタルになってもおかしくは無いのに、それさえも忘れてしまったのだろうかと幼女は考えた。
「なにか言いたそうな顔だね、マイヴィーナス」
家主は幼女の頭を優しく撫でる、さっきまで眠くて眠くして仕方なかったはずが、眠気はどこか風に飛ばされていた。
「べつに......でも、あの、辛くないのかなって」
「それは僕も考えたんだけど、どうしてかな。いきなり記憶を全部無くすと人って辛いというか、ビックリするんだよね」
「びっくり、ってそれだけですか?」
「いや、まぁ後からちょっと泣いたけどね」
家主は恥ずかしそうに人差し指を口に当てた。そしてまた微笑んだ。





